ライヴはいよいよクライマックスに差し掛かり、MEJIBRAYとファンの、全てをかけた決死のばか騒ぎがはじまる。『原罪の林檎』、『嘘と愚行-それもまた人間らしいって神様は笑ってるの-』、『枷と知能-それってとても人間らしいって神様は笑ってるの-』……、新旧問わない珠玉のアッパーチューンが惜しみなく叩きつけられ、まばゆいライトに輝く会場の熱気は天井知らずに高まっていく。
怒号のようなコール、モッシュで生き物のようにうねるフロア、髪を振り乱して絶唱する綴、一音一音が研ぎ澄まされた迫真のプレイのMiA、ステージから落ちんばかりに身を乗り出してファンを煽る恋一、椅子の上に立ち上がり小柄な身体が何倍も大きく見える全力のドラミングのメト。会場の全てが、“誰もいなくなる”ことに必死にあらがっていた。
恒星は、その寿命を終える時に大爆発を起こし、一生で一番輝くという。夜空の星の最後のように美しく発光する熱気が、新木場STUDIO COASTを包む。
水を打ったような一瞬の静寂の後、ラストソングは『BI“name”JIKA』。この曲の最後に私たちは、恐ろしいものを目撃することになる。
噛みしめるように歌い上げていた綴の声が段々と揺らぎ、ついに泣きじゃくりながら崩れ落ちたのだ。恋一はベースを投げ出して綴に駆け寄った後に立ち上がり、高々と腕をつきあげた。虚空を睨みつけ、中指を立てた彼は、その手をパッと人差し指と中指と薬指を立てる3本指のサインに変えた。3本指のサインは“革命と結束”を表している。
熱気にとけた黒いペイントに浮かんだ、決意に満ちた彼の表情を筆者は一生忘れることができないだろう。
メトは最後まで叩ききり、フロアに向かって深々と頭を下げた。言葉を話せないゆえに、いつも豊かな表情とジェスチャーで私たちに思いを伝えていた彼らしい最後だった。MiAも最後の一音まで一切の動揺を見せずに“責務を全う”し、がくりとその場に膝をつく。
ゆっくりと、無情に幕が閉まる。懇願するような不揃いなアンコールの絶叫に、「本日の公演は全て終了しました」のアナウンスが虚ろに響いていた。
泣き叫ぶ人、崩れ落ちる人、開かない幕を見つめ拍手を送る人。MEJIBRAYが青春だった人もいるだろう、元気の源だった人もいるだろう。最近興味を持ち、この日が初めてのライヴだった人もいたかもしれない。MEJIBRAYはその全ての人の心に、いや、2010年代のヴィジュアル系シーンに永遠に消えない鮮やかなトラウマを残し、ステージから“誰もいなくなった”のである。
結成から活動休止まで予定調和や惰性が一切なく、いつも最高にドラマチックだったMEJIBRAY。鮮やかなトラウマがもう一度彼らの手で塗り替えられるまで、私たちは心のどこかで空の舞台をずっと見つめている。
~セットリスト~
1:剥落
2:Agitato GRIMOIRE
3:VICTIM(ism)
4:月食
5:DECADANCE - Counting Goats … if I can't be yours -
6:醜詠
7:-XV-
8:Hatred × Tangle red × Hunger red
9:ナナキ
10:DIE KUSSE
11:原罪の林檎
12:嘘と愚行-それもまた人間らしいって神様は笑ってるの-
13:枷と知能-それってとても人間らしいって神様は笑ってるの-
14: BI“name”JIKA
「そして誰もいなくなった TOUR FINAL at 新木場STUDIO COAST」7th LIVE DVD
2018年3月7月 Release
DVD1枚組 14songs/16Pブックレット/¥6,000+税/WSGD-9
収録曲:
1.剥落
2.Agitato GRIMOIRE
3.VICTIM(ism)
4.月食
5.DECADANCE - Counting Goats … if I can't be yours -
6.醜詠
7.-XV-
8.hatred × tangle red × hunger red
9.ナナキ
10.DIE KUSSE
11.原罪の林檎
12.嘘と愚考-それもまた人間らしいって神様は笑ってるの-
13.枷と知能 -それってとても人間らしいって神様は笑ってるの-
14.BI"name"JIKA
発売元:株式会社フォーラム 販売元:ダイキサウンド株式会社