錬金術が存在する架空の世界を舞台とした大人気ダーク・ファンタジー作品『鋼の錬金術師』。2017年にHey!Say!JUMPの山田涼介が主人公のエドワード・エルリックを演じ、話題になった実写映画が5年ぶりにスクリーンに帰ってきた。エドワードたち国家錬金術師の抹殺を誓う男との対決を迫力たっぷりに描く『鋼の錬金術師 復讐者スカー』が5月20日に公開され、6月24日からは、次々と明らかになる国家を揺るがす陰謀に導かれていく完結編『鋼の錬金術師 最後の錬成』が公開された。今回は主人公のエドワードを演じた山田とエルリック兄弟の父親であるヴァン・ホーエンハイム役を演じた内野聖陽に話を聞いた。
-今回は、ほとんどグリーンバックでの撮影だったと思いますが、面白さや大変さはありましたか。
山田 グリーンでの面白さは特にないですよね?
内野 いや、俺はあったよ。
山田 えー!(笑)。楽しいかは置いておいて、想像力を豊かにしないといけないので、現場で、みんなで作り上げている感じや空気感はすごく好きですし、出来上がったときの感動はなかなか味わえないものがあるかなと思います。
-内野さんは、今回グリーンバックでの撮影はいかがでしたか。
内野 難しかったですね。自分の中の想像力や記憶を使ったりしなくちゃいけないので、いかに普段、美術だったりセットだったり、周りの環境に助けられていたかというのを感じました。今回は本当に何もなかったので、シナリオや原作、監督への理解を自分の中にたくさん持っていないと立っていられないんですよ。そういう意味では鍛えられるし、世界観にはまると面白い。それがすごく彼(山田)は分かっているんですよね。座長として立派にやっていたので、頼れる主役だったなと。
-山田さんは、前作でアクションやスタントを全てご自身で担当していましたが、本作も全てご自身でこなしたのでしょうか。
山田 そうですね。体力的に大変な部分もありましたが、難しい部分はそんなになかったので苦ではありませんでした。
-役や現場の向き合い方について、互いに思ったことを教えてください。
内野 空き時間に彼と話していて、CGを使ったSF的な映画って、海外だととても盛んじゃないですか。そういった動画を見せてくれて「こんな感じであっちではやっているんですよね」というのを熱く語ってくれて、「あっちはレベル高いなあ」って(笑)。「でも、日本のCGも、今や遜色ないところまで行っているから、俺たちも頑張れそうだな」って話をしてたときに、彼は共演者の中でも特に意識が高くて曽利(文彦)監督のCGのビジョンに確信を持っているんですよね。そこがすごく立派だなと思いました。
-山田さんはいかがですか。
山田 僕なんかが言うのは本当におこがましいんですけど、役への没入の仕方は、やっぱり全然違うなと思いました。(役への)アプローチの仕方というか、クランクインの前から親子の関係を出すためにコンタクトを取りたいって言ってくださって、うれしく思いました。あとは、現場で“お父様”でいるときと、ホーエンハイムでいるときとの身にまとう空気感の違いですね。“お父様”でいるときは話しかけにくい雰囲気でした(笑)。
-カメラが回ってなくても空気が違ったのでしょうか。
山田 そうですね。「何か怒っているのかな?」みたいな(笑)。でも、ホーエンハイムでいるときは、気軽に話し掛けられるので、役への没入感というところがとても勉強になりました。あと、フラスコの中の小人の声も内野さんが吹き替えをされていて、隣の楽屋だったときに、発声練習しているのが聞こえてきてすごいと思っていました。
内野 (発声練習で)すごく遊んでいましたね(笑)。
山田 (撮影を)楽しんでくださっているのかなって。もちろん難しいこともたくさんあったと思いますが、どうやったら面白くなるんだろうというのを考える姿勢に、役者として経験の差をすごく感じました。
内野 そういいながら自分の方もすごく没入していた気がするけど(笑)。俺から言わせてもらうと。
山田 本当ですか? 気付きませんでした(笑)。
-カメラが回っていなくても役になるというのは、普段の撮影でも重視しているのでしょうか。
内野 というより、“お父様”というキャラクターは非常に口数が少なく、感情を消してしまっているようなところがあるので、そういうキャラクターを演じるときに、収録直前まで普通に話していたら役に入れないんですよね。そんなに器用ではないので(笑)。そのキャラクターが持つ居住まいや呼吸というのを常にイメージしていないと、薄っぺらくなってしまうじゃないですか。なので、自然と人を寄せつけなくなってしまっているのではないかと思います。
-最後に、ファンへメッセージをお願いします。
山田 ものすごいクオリティーで再現されていますし、生身の人間が演じることで、人間が持つ温かい部分や冷たい部分というのがとても人に伝わりやすい映画になったと思っています。キャラクターのバックグラウンドも丁寧に描いていますし、それぞれが持つ強さというものを感じていただければと思っています。
内野 この映画はオールCGということで、いろいろなところでCGのことばかり取り上げられてしまっていますが、この作品で描かれているのは平和や戦争の問題、人種間の問題など、現実世界で起きている変わらない人間の愚かさであるとか、人を元気にさせるポジティブなメッセージがたくさん込められています。大人でも楽しめるファンタジー作品になっているのではないかなと思います。
(取材・文/丸山有咲)