次代を担う花形が顔を揃える7月の歌舞伎座公演「歌舞伎座新開場柿葺落 七月花形歌舞伎」に向けて、市川染五郎、尾上松緑、片岡愛之助、尾上菊之助の4人が6月14日、東京・銀座のGINZA KABUKIZA 地下2階「木挽町広場」でトークイベントを行った。
まず、4人は「歌舞伎座が開場して4・5・6月と、皆様のおかげでとても盛り上がっている中、初めての花形歌舞伎です。大先輩の方々がいらっしゃいますが、僕たちの世代で歌舞伎座を支えていく意気込みで舞台を勤めます」(市川染五郎)、「先輩の方々がこけら落としを頑張って盛り上げていただきました。そこに私たちも乗せていただいて、いい舞台を勤めます。幸い頼もしい仲間たちがいるので、3人の尻馬に乗って、おいしい思いをさせていただけたら」(松緑)、「旧歌舞伎座のさよなら公演は2年近くやっていましたが、私は1度も出ませんでした(笑)。今月初めて出させていただいて感動しています。7月は先輩方が築いていらっしゃったものを受け継いで、頑張っていきたい」(愛之助)、「染五郎さん、松緑さん、愛之助さん、同世代の人たちで幕を開けることができるのをうれしく幸せに思っています。私たちの世代が盛り上げられるよう頑張っていきたい」(菊之助)とそれぞれ挨拶。
「七月花形歌舞伎」で上演するのは、昼の部『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』、夜の部『東海道四谷怪談』の2演目。それぞれ岩藤、お岩と、女性の幽霊が出てくる怪談物の名作を通し上演する。お岩の夫・伊右衛門役の染五郎は「初めて伊右衛門をやらせていただきます。今回、上演するのは久しぶりになるのですが、「夢の場」をつけています。お岩とはそもそも夫婦であったことがよくわかる場面で、それとの対比の中で悲劇を描きます。新しい歌舞伎座になって初めて、宙乗りが昼夜の公演であります。歌舞伎ならではのスペクタクルな舞台を楽しんでいただけたら」と話す。
お岩を演じる菊之助は「190年ぐらい前の作品で、私の祖先にあたる三代目菊五郎がお岩役で初演していて、生涯で9回演じている音羽屋ゆかりの演目です。最近は音羽屋とは少し縁遠くなっていたので、染五郎さんとやらせていただく機会を得て大変うれしく思います。暑い最中ではありますが、お客さまに背筋が凍る思いをしていただけるよう頑張りたい」。
岩藤を演じるのは松緑。「宙乗りや早変わりがあります。猿翁の兄さんや猿之助さんではなくて、私がさせていただくというのは青天の霹靂といいますか。慣れないことばかりです。早拵えなどは、染五郎さんや菊之助さんが慣れていらっしゃるので、アドバイスをいただいていい舞台を」と話しながら、「幽霊のおっかないところからきれいになるところが眼目のひとつ。アクセントをきっちりつけて演じたい」と意気込みを語った。
愛之助は『加賀見山再岩藤』でお家乗っ取りを企てる望月弾正役。司会者からの質問に「悪役は好きです。ストレスがたまらないので」と答えると、すかさず松緑から「そのままだもんな」とツッコミが入り、会場の笑いを誘っていた。