2月の博多座は、中村勘九郎、中村七之助、尾上松也といった人気花形揃い踏みで「二月花形歌舞伎」を上演。昼の部は、幕末の鹿児島を舞台に運命に翻弄される若者を描いた『磯異人館』、早替りを交えながら七役を見事に演じ分ける様が魅力の『お染の七役』。夜の部は時代物の勇壮さと様式美が堪能できる『義経千本桜 渡海屋・大物浦』、一目惚れの恋をテーマにした三島由紀夫作の喜劇『鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)』といったバラエティに富んだ名作揃いだ。2月2日(金)の開幕を前に、中村勘九郎、中村七之助に話を聞いた。
博多座は5年ぶりの出演となるふたり。勘九郎が「父(故・中村勘三郎)との思い出が多い劇場ですので、来たかったんですよ」と語る博多座での公演だけに、演目にもかなり気を配った。博多の友人が多い七之助はリサーチも入念に行なったとか。「わかりやすくて派手なものがいい、という声が多かったんです。表面的にわかりやすいだけではなく、情愛の深いものや、様々な感動がある演目ばかり。歌舞伎にもいろいろなジャンルがあるんだと思って頂けると思います」(七之助)
父、祖父が演じてきた思い出深い演目『鰯賣~』は夜の部で上演。2014年の「中村勘三郎三回忌追善公演」で初めて兄弟でやり、今回は2回めとなる。「九州では父も祖父もやっていないので、九州初上陸の演目となります。三島由紀夫先生が六代目歌右衛門と私の祖父に当てて書いてくださった作品で、逆シンデレラストーリーの超ハッピーエンドな物語。残念ながら直接父から教わる機会はなかったのですが、大好きな作品だったので父が演じていた時の息づかいなどもしっかり覚えています。ふわっとした愛嬌や色気が漂うような空気感が出せれば」と勘九郎。
そして七之助が七役を演じ分ける『お染の七役』は昼の部で上演される。「早替りはもちろん楽しんで頂きたいのですが、実は今回台本も少し変えようと思ってまして。お家騒動に至るまでの登場人物の思惑や背景をもう少し詳しく表現します。冒頭に関してはほとんど新作になってますね。新しくなった『お染の七役』は博多座が初上演。しかも今回は兄も早替りするんです。同じ演目でふたりの役者が同時に早替りするのはあまりないので、お楽しみに!」と七之助。「え?今、初めて聞きました(笑)」と驚く勘九郎に、「大丈夫、大丈夫(笑)」と七之助が笑顔で返すなど、兄弟ならではの率直なやりとりが微笑ましく、どんな舞台になるのか期待が高まる。
同世代であり、子どもの頃からの仲である尾上松也が全演目に出演するのも話題。「気楽に楽しんで騒いで頂いて。あ、他のお客様にご迷惑にならない程度に(笑)。熱い博多の気質で、どんちゃん騒ぎながら観て頂けたら嬉しいです」(七之助)「今回出てくださる先輩方は皆さま寛容な方ばかりなので、騒いでもきっと許してくださると思います(笑)」(勘九郎)
2月2日(金)から25日(日)まで博多座で上演。チケット発売中。