お祭りや芸能でおなじみのお囃子のうち、歌舞伎や日本舞踊などの舞台で演奏されるのが、“邦楽囃子”だ。望月秀幸と望月左太寿郎が主宰する「お囃子プロジェクト」(通称オハプロ)は、この“邦楽囃子”の魅力を広く伝えたいと始まったライブユニット。2010年の始動以来、洋楽やアジア、演歌とさまざまなジャンルを取り入れ、好評を博してきた。今回のコラボは「民謡」。初めて歌が入る、そのステージに注目だ。

お囃子と民謡。海外の音楽に比べれば、だいぶ“距離”は近いように思えるが……。
「曲をただ演奏するのではなく、毎回、幅広い世代のお客様に楽しんでもらえるようにアレンジを施しているので、今回も苦労はたくさんあります」と笑う秀幸。
今回予定されているのは、クイーンの「We will rock you」と民謡の黒田節をミックスした「黒田節ロックユー」や、美空ひばりの「お祭りマンボ」と民謡の「おてもやん」を混ぜ合わせた「お祭りマンボやん」、さらにプロレス選手の入場曲を民謡で歌うものまで、どれも気になるラインナップ。確かにどんな音になるのか予想がつかないが、公式YouTube「お囃子プロジェクトチャンネル」で公開されている映像を観ると、過去のコラボは意外なほどにスピード感とライブ感にあふれた仕上がりだ。

「本当に、一度観ていただけたらイメージが変わるかもしれないです(笑)。邦楽囃子は締太鼓や大鼓、小鼓、笛の4つがメインなのですが、音の出し方がとても繊細なので、演奏方法が細かく決まっているんですね。そこは守りつつ、毎回コラボする音楽も大切にするのがオハプロ。今回も民謡ならではの“縛り”がありますので、細かく工夫を重ねてお送りしたいです」と左太寿郎。
「ゲストは民謡三味線や歌手の方はもちろん、パーカッションやギター、チェロの方をお呼びしています。僕はバンド経験があるのでアレンジを担当しているんですが、邦楽と洋楽の2種類の楽譜を用意しなくちゃいけないんです。どちらも読めて幅広いジャンルに対応できるパーカッションのジャイアン谷口さんにはいつも助けていただいています!」と秀幸も語る。

東京藝術大学で同級生だったふたり。20代後半となって邦楽の未来を考える中で、オハプロをスタートしてから12年。
「普段は歌舞伎や日本舞踊の舞台がよりよい作品になるようにと演奏するのですが、オハプロでは、客席のお客様に満足してもらうことが目標」と秀幸が話せば、左太寿郎も「これからも新しいことにどんどん挑戦していって、お客様にはお囃子だけでなく、他の邦楽の面白さも発見してもらえたら」と話す。
今回もオハプロならではの、肩の力を抜いて楽しめる演目が満載。歌舞伎や邦楽好きの人も、そうでない人も、気軽に楽しめるライブになりそうだ。

取材・文/藤野さくら