「大河ドラマ『鎌倉殿の13人』プレミアムトークin埼玉~比企一族スペシャル~」が、8月7日、埼玉県の東松山市民文化センターで開催された。
ドラマでは、北条家のライバルであり、この地に縁のある、比企一族の重鎮、比企尼を演じる草笛光子が、比企能員役の佐藤二朗、比企時員役の成田瑛基、せつ役の山谷花純と共に登壇し、ドラマの撮影秘話を披露した。
まず話題にしたのは、第24回で比企尼が源頼朝をビンタしたシーン。頼朝役の大泉洋がトークショーなどで「台本に書いてないのに、草笛さんが3回もビンタしてきた」と明かしたことで注目を集めた。
これについて草笛は「あのビンタは、もっとぶってもよかったんですけどね(笑)」と前置きしつつ、「でも…」と言葉を続けた。
「あのシーン、私が悪いみたいに世間で言われていますね。私が一人で決めてぶった、みたいな話になっていて。大泉さんがそういうふうにあっちこっちで言いふらしているんです(笑)。1回でいいのにテストも含めて3回もぶったとかね」
やや納得がいかない様子の草笛に、すかさず佐藤が「大丈夫ですよ、大泉洋はあと8回ぐらいぶっても大丈夫です。大泉が悪い(笑)」と援護射撃。
すると草笛は、脚本の三谷幸喜と事前にこんなやりとりがあったことを明かした。
「まだ台本ができる前に、三谷さんが、私にじかに『今度は頼朝をひっぱたきますからね』とおっしゃったので、『どうしてですか?』と聞いたんです。それで分かったんですが、あの子(頼朝)は、小さいときから私(比企尼)が育てたわけですから、だからぶてるんですよね、悪いことをしたら。『そういう役ですから』って、三谷さんからは言われていたんです」
三谷の話を踏まえ、「頼朝をひっぱたく」ことを想定して撮影に臨んだ草笛。ところが、「でもそのあと、どこでぶつのかな、と思いながら台本が進んでいっても、どこにもそういうシーンがないんです」とやや肩透かしを食らった様子。
そうしているうちに、「あるところへきたら、頼朝に対してひっくり返るような気持ちになったシーンがあって、『あっ、ここかな?』と思いまして、三谷さんに『ぶつのはここですか?』と聞いたんです。そうしたら『あっ、そうですね、そうでした』って、書く本人が(笑)」とのこと。それが第24回だった。
こうして「それで『ぴしゃっとやっていいです』となった」と、台本にはなかった頼朝へのビンタが決定。
当日は「撮影のとき、大泉さんに『私の手は痛いのよ』って言いました。そうしたら、おびえちゃって、たたく瞬間に少し逃げたんですよ」というエピソードも。この点については、「逃げなきゃもうちょっといい音が出たんですけどね(笑)」とやや残念そう。
この他、乳母として頼朝を育て、比企家を支えた比企尼について、「器の大きな、たっぷりとした人」「余計なことは言わないけど、ちゃんと要所要所に目が届く」「すごい女性」と手放しで褒めた草笛。
最後は「皆さまに今日お目に掛かれてとてもうれしいです。この作品に出させていただいて、ありがとうございます」とあいさつし、トークを締めくくった。
(取材・文/井上健一)