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 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=羽柴秀吉/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。5月24日に放送された第20回「本物の平蜘蛛」では、小一郎が秀吉と共に、謀反を起こした松永久秀(竹中直人)の説得を試みる様子が描かれた。


 この回がユニークだったのは、あらゆることの真実が見えず、視聴者を煙に巻くような話だったことだ。「名物茶器・平蜘蛛を渡せば謀反は不問にする」という織田信長(小栗旬)の要求に基づき、久秀との交渉に臨んだ小一郎と秀吉。だが久秀は、領地の大和にこだわる理由について、「かの地には、お宝が眠っておる」と南北朝時代の財宝を捜していると語ってみたり、かつて仕えた三好長慶から託された領地であると語ってみたり、本心が全く見えず、そのたびに「と言ったら、信じるか?」と2人を翻弄(ほんろう)する。


 その途中、出自について「真のことなどどこにもない」と前置きし、父親が贋作師で、自分は父の側女の子であると明かすと、「幼い頃は、ずっと思っておった。このわしも、父に作られたまがい物じゃとな。周りからは、卑賎(ひせん)の子とさげすまれた。だから心に誓ったのじゃ。いつか必ず本物になって、見返してやるとな」と語っていた。だが、これもどこまでが真実かはわからない。


 最終的に、ふたつある平蜘蛛のうち、どちらが本物かを見極める賭けを挑み、小一郎が勝ったことで久秀は説得を受け入れるが、「支度してまいる」と奥に引っ込んだ隙に自爆を決行。駆け付けた2人に向かって久秀は、「すべて偽りじゃ!」と告げ、「あの平蜘蛛は、ふたつとも偽物じゃ。わしは、とうとう本物を手に入れることができなかった。お前が先に壊そうとしたあれはな、わしの父が作ったものじゃ」と打ち明ける。だがここでも「と言ったら、信じるか!?」と、最後まで煙に巻こうとした。


 戦国武将らしい重厚感がありながら、捉えどころのない人を喰ったような久秀の振る舞いは、まさに緩急自在な芝居を得意とする竹中の独壇場。それが、実直な小一郎を演じる仲野、全力で秀吉を演じる池松との間で絶妙なケミストリーを生み、唯一無二のシーンとなっていた。それは同時に、この不思議なやりとりに絶妙な説得力を与えていた。


 そして炎上する久秀の城から脱出する際、小一郎たちは「偽物」とされた平蜘蛛を持ち出すが、報告を受けた信長は、平蜘蛛を2人に与え、上杉との戦いで勝手に戦線離脱した秀吉を許す。その様子を見ていた小一郎は、「もしかしたら、上様は最初からこれが偽物であると、知っておったのではないか」と、久秀と平蜘蛛の件は秀吉を許す口実ではなかったのかと、信長の心情を推し量る。その上、偽の平蜘蛛の中からは、久秀の戯言かと思われた財宝の隠し場所にまつわる地図が出てくる…。


 さらにこの後、平蜘蛛らしき茶器を眺める信長に向かって、市(宮崎あおい)が「いつ見ても美しいものですね、本物の名器というものは」と声を掛ける場面があった。このとき信長が眺めていた茶器は一体何なのか。本当に平蜘蛛だとすれば、実は信長がもともと持っていたものなのか…? 明らかだと思っていた信長の真意もはっきりしなくなり、謎は深まるばかり。だが、その割り切れない不可思議さこそが人間の奥深さである、ということを描こうとしたようにも思える。そしてその不可思議さは、“食えない男”松永久秀を演じる竹中ならではの演技が加わることで、グンと説得力が増していた。


 この回が、これからの物語にどのように作用するのか。心に留めながら、今後の展開を見守っていこうと思える印象的なエピソードだった。


(井上健一)