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Jホラーブームの火付け役となった、鈴木光司・作の『リング』シリーズ。そこに登場する怨霊・貞子は、映画はもとよりWebサイトやゲームにまで登場、今や国内外で知名度抜群の日本のホラークイーンだ。その貞子が初めて歌舞伎の舞台に登場する。「日本怪談歌舞伎(Jホラーかぶき)」と銘打った今作は、貞子と歌舞伎の「皿屋敷伝説」が古井戸を通して時空を超えて交錯する、新作歌舞伎『時超輪廻古井処(ときをこえりんねのふるいど)』として上演。脚本・構成は新作歌舞伎の『NARUTO‐ナルト‐』や『風の谷のナウシカ』を手掛けたG2。出演は片岡愛之助、今井翼、中村壱太郎ら、人気シリーズ『GOEMON 石川五右衛門』のメンバーを中心にした座組でお届けする。主演の愛之助が東京で行われた製作発表で、意気込みを語った。

Jホラーかぶき 日本怪談歌舞伎 貞子×皿屋敷『時超輪廻古井処』 チケット情報

オカルトファンの愛之助に「初めて映画を拝見した時は衝撃でした。怖くて夜中にトイレに行けなくなったり、しばらく怖かったですね」と言わしめた『リング』。その貞子と共演すると聞き「昔から見ていた貞子さんですから、感慨深いものもあり、すごくワクワクしています」。

物語は、室町時代後期。足利幕府が機能不全となった乱世に乗じ、天下掌握の野望を抱く細川家の国家老・浅山鉄山(愛之助)は、邪魔な忠臣・船瀬と許嫁・お菊(壱太郎)を井戸に沈めて殺害。しかし、不思議な力によって鉄山も井戸に引きずり込まれてしまう。500年後の現代。同じ古井戸のそばで、古いビデオテープの映像を見た若者たちが謎の死を遂げ、神官の室戸光(今井翼)が調査に乗り出すが…。「歌舞伎の『播州皿屋敷』の世界と貞子の世界が融合されている感じです」。よく上演される『番町皿屋敷』とは違い「残酷で、これだけでも十分にホラーな作品。お菊を縛り上げて竹刀でビシビシ叩くんですよ。鉄山、なんて恐ろしい役だと」。愛之助は11年前に松竹座で『播州皿屋敷』の鉄山を演じている。今回は「同じ役ですが、ただ怖いだけではなく、ちょっと愛嬌のある部分など、人間らしさがより濃く描かれていると思います」。

現在はG2の描くプロットに、よりおもしろくなるよう自らのアイデアを提案しながら制作中だ。「人の思いや念というものが時空を超えてやってきます。怖さ倍増、いや倍以上かも(笑)。でも歌舞伎ですからね、怖すぎて観るのがイヤという人がいても困るので(笑)。初日が開いてみないとどんなものになるかわかりませんが、全力で傾(かぶ)いて盛り上げていきたい。『GOEMON』のように何度も再演され、できれば海外公演も」と意気込む。公演は、10月3日(月)から25日(火)まで、大阪松竹座にて。チケットは、8月24日(水)一般発売。また、10月28日(金)からは映画『貞子DX』も公開される。

取材・文:高橋晴代