宝塚歌劇OGの競演が話題を集める『8人の女たち』が、8月27日に東京・サンシャイン劇場で開幕した。前日に行われたゲネプロの様子をレポートする。
フランスの劇作家ロベール・トマの戯曲を、フランソワ・オゾン監督がミュージカル映画化(2002年)したことでも知られる本作。宝塚歌劇でトップスター&トップ娘役として活躍したキャストが揃う今回のストレートプレイ版では、上演台本・演出を板垣恭一が手がける。殺人事件が起こった大邸宅の中で繰り広げられるミステリー劇に8人がどう立ち向かうか注目したい。
クリスマスイヴの朝、雪に閉ざされた邸宅の主マルセルが刺殺された。外部から不審者が侵入した形跡はなく、クリスマスを祝うために集まった彼の妻ギャビー(湖月わたる)やその妹オーギュスティーヌ(水夏希)、マルセルの妹ピエレット(珠城りょう)、マルセル夫妻の娘シュゾン(蘭乃はな)とカトリーヌ(花乃まりあ)、ギャビーとオーギュスティーヌの母マミー(真琴つばさ)、メイドのシャネル(久世星佳)とルイーズ(夢咲ねね)が容疑者となる。互いに疑心暗鬼になって犯人を詮索するうちに、女たちの嘘や秘密が次々と暴かれて──。
青い美術セットに、赤を基調とした衣裳に身を包んだ8人。とにかく全員に芝居心があってセリフが聞き取りやすく、ラストまで息もつかせぬ展開で客席を魅了する。湖月は心の奥底にとある想いを秘めながらも夫人として上品に振る舞うギャビーを体現。時折スポットライトを浴びて“水劇場”が始まるオーギュスティーヌはコメディリリーフとしての役割を果たす。年配者役とは思えない真琴マミーによる“車椅子との付き合い方”にも大いに笑わされた。宝塚歌劇退団後、初の演劇作品となる珠城は艶っぽいピエレット像を立ち上げる。
久世シャネルは、実直な仕事で信頼を得ているメイドぶりで劇世界に貢献。同じメイドながら厚化粧で妖しさを醸していた夢咲ルイーズとの対照的な存在感にも注目だ。途中まで狂言回しが冴えていたはずの清廉な蘭乃シュゾン、幼い少年を感じさせる無邪気な言動で周囲を振り回す花乃カトリーヌ姉妹がそれぞれ抱えた秘密も劇世界を紐解く重大なヒントになるだろう。なおオゾンの映画でネタバレを知ってから鑑賞する場合は、ぜひセリフを発していない人物の“オフ芝居”も見届けて欲しい。細かな表情や動作まで緻密につくり込まれた芝居だと実感できるはずだ。
上演時間は、約150分(20分休憩を含む2幕)。東京公演は9月4日(日)まで。その後、9月9日(金)〜12日(月)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティへ巡演する。感染症対策を講じて上演される劇場公演のほか、PIA LIVE STREAMでは9月3日(土)17:00開演回の「ライブ配信」を実施。6日(火)23:59までアーカイブ視聴できる。いずれもチケット販売中。
取材・文:岡山朋代