
演劇プロデュースユニット・城山羊の会を 率いる山内ケンジが、新作『温暖化の秋 -hot autumn-』でKAAT神奈川芸術劇場に初登場する。その山内が、キャストの橋本淳と一緒に稽古前のタイミングでインタビューに応じた。
人間の本能や欲望を、絶妙なユーモアを交えて活写する艶っぽい会話劇が定評を得ている山内。今回は、橋本以外のキャストに趣里、岡部たかし、岩谷健司、東野絢香、笠島智、じろう(シソンヌ)が名を連ね、婚約した男に対する女の、疑惑と追及の物語が繰り広げられる。
岸田國士戯曲賞を獲得した『トロワグロ』(2014年)、『相談者たち』(2017年)と過去の城山羊の会作品で存在感を発揮した橋本は、山内が手がける戯曲の魅力を「登場人物のボソボソした会話の応酬に潜む毒っ気やエロ、ユーモアが淡い感じのグラデーションでほのかに滲んでいる様がとても好きで、魅力的だと思っています」と語り、城山羊の会を定期的に観劇している長いファン歴を明かした。
そんな橋本とオーディションで出会った山内は、「設定がハッキリした役も、何の特徴もない普通の青年も、どちらも上手に演じてくれます」と橋本を褒め称える。その言葉に笑顔を見せた橋本は、本作の稽古を前に「登場人物それぞれの内情や関係性といった微妙な塩梅をすべて内包しているようなニュアンスたっぷりのセリフを何度も返して積み重ねることによって、山内さんの生み出す劇世界に貢献したい」と意気込んだ。
観客だけでなく、演劇人にも愛されるセリフや笑いの源泉はどこにあるのか──。そう山内に尋ねると、「放り投げるように唐突に終わるラストが“落語”っぽいと言われます」とコメント。また「箱書き(プロット)を考えずに書かれている落語は、僕の創作と似ているかもしれませんね」と続き、「“そこまで言わなくても”的な過剰なセリフや、受け取る相手が誤解するような言い回しを、わざと散りばめるんです。そういう会話の齟齬を数パターン検証してから書き進めるので、つまらない内容が続いた途端に筆が進まなくなる」と苦笑した。
試行錯誤の結晶のような山内の台本は、日ごと数ページずつキャストの元に届くという。本作もすでに10数ページが渡されたそうで、橋本は「本当におもしろくて、深夜に一人クスクス笑いながら拝読しました」と山内に感想を述べた。そして「セリフのおもしろさを“伝わるように”発する難しさ、苦しさ、大変さの向こう側におもしろい世界が待ち受けているので、稽古を重ねて早くその境地へたどり着けたら」と語り、インタビューを結んだ。
公演は11月13日(日)~27日(日)に、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて。11月23日(水・祝)、25日(金)にて追加公演も決定。追加公演のチケット発売は10月23日(日)10:00より。
取材・文:岡山朋代