左から池田純矢、鈴木勝吾 撮影:京介 左から池田純矢、鈴木勝吾 撮影:京介

池田純矢が作・演出を手掛けるエン*ゲキシリーズ第6弾の即興音楽舞踏劇 『砂の城』が東京で上演中だ。これまで、自らが脚本・演出を手掛け、コメディーなど多くの作品を創作してきた池田。初となる即興音楽舞踏劇に込めた思いについて、池田と出演の鈴木勝吾に聞いた。

エン*ゲキ#6 即興音楽舞踏劇「砂の城」 チケット情報

「クリストファー・ノーランみたいなうまい脚本が好き。でもハッピーで楽しく遊園地みたいな作品も好きで、そういうのを作るのは僕の個性でもある。ただ、自分のドロドロとしたエゴや恥ずかしい、醜い、汚いと思っている部分と向き合うことでしか優れた作品は書けないと思っているんです」と池田。今作の物語は架空の王国を舞台に、王座を狙う太子・ゲルギオス(池田)、次期領主として期待される青年・テオ(中山優馬)、テオの幼なじみのアデル(鈴木)らが絡み、王位継承やもろく崩れていく関係性を描く。

池田に即興音楽舞踏劇にした理由を尋ねると「例えば、ミュージカルでテンポやハモりを気にすると、感情と真逆になる時がある。音楽が感情を語るのは理解していますが、いつもどちらかというと、あえて音楽に感情を寄せて表現していた。今回はその逆で自分の生の感情に音楽を寄せたい。今の自分を見せる最高の表現は即興性だと思ったんです」と言い切る。このエン*ゲキシリーズに最初からかかわり何作も出演してきた鈴木は、「今回が一番挑戦的だなと。違う思いを込めて作っているんだろうなとすごく感じますね」と話す。

ダンスは音楽のシーンだけに使われるのではない。常に舞台上に存在しているという。「作曲されたものもありますが、半分はピアニストの即興です。だから音楽もダンスも限りなく即興に近い。セリフも個々の俳優がリアルに正直に感じられるなら変えてもいい」と池田。鈴木も「僕はダンサーではありませんが、今回のダンスは即興で相手に感情を伝える身体表現なのでお芝居と一緒だ」と言う。

鈴木は池田のことをライバルであり友達だと語る。「俳優は孤独な仕事なので、ほかの人は皆、ライバルだと思うんです。ライバルではないのは嘘でもあるし、相手に対しても自分に対しても失礼」と鈴木が言えば、池田は「ライバルは相手を倒したいというイメージがあって、僕は勝ちゃんのことを倒したいと思ってない」と笑った。

池田が今作で俳優たちに望むことは、「お芝居をしないこと」だと言う。「感じるまま、思うままにやってほしい。それが物語を作るんです」。これに対し、鈴木は「何もしない=何かするだと思っていて。役としてそこに生きればいい。型にはまったことをしてほしくないという意味ですよね? すごく怖いけど楽しいです」とすかさず言い、息の合う様子を見せてくれた。

東京公演は10月30日(日)まで紀伊國屋ホールにて上演中、大阪公演は11月3日(木・祝)から11月13日(日)までABCホールにて。チケット発売中。

取材・文:米満ゆう子