2011年にドラマ「家政婦のミタ」で長男役を演じて注目を集めて以降、NHK大河ドラマ「真田丸」、NHK連続テレビ小説「なつぞら」など、数多くの話題作に出演する中川大志。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では畠山重忠を演じ、その迫真の演技が高い評価を得た。そんな中川が、11月6日から上演される音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」に主演し、初めて本格的な舞台に挑戦する。舞台出演への思いや公演への意気込みを聞いた。
-本作が本格的な舞台初挑戦になりますが、どのような思いから舞台に出演することを決めたのですか。
三銃士企画(明治座・東宝・ヴィレッヂの3社が共同で企画プロデュースするプロジェクト)の第一弾公演の「両国花錦闘士」を、2020年に明治座で観劇させていただいて、そのときにプロデューサーの皆さんから「一緒にやりませんか」というお手紙を頂いたことがきっかけでした。僕は10代の頃からミュージカルや演劇を見るのが大好きで、舞台に立ちたいという思いがあったので、三銃士企画の皆さんのエネルギーを感じて、すぐに「やらせてください」とお返事をさせていただきました。舞台に挑戦することでどうなっていくのか、自分でも全く想像できませんが、そんな新しいチャレンジをこのタイミングでできるというのはすごくありがたいことだと思っています。
-(取材当時)稽古がスタートして3週間たったそうですが、初めての舞台稽古の感想は?
お客さまの前に立つまでに稽古期間があるというのは、自分にとっては経験のないことなので、すごく楽しみでした。稽古場にも慣れていないので、どう取り組んで、どうやって積み上げていけばいいのか、最初は分かりませんでしたが、少しずつ慣れてきたところです。何よりも優しい先輩方がたくさんいらっしゃるので心強いですし、救われています。今は皆さんとのコミュニケーションも増えてきて、カンパニーの雰囲気も少しずつ出来上がってきているのを感じています。
-(本作で中川が演じる)歌手・桜木輝彦として、LPレコードと配信によるデビューも決定しました。舞台の主題歌でもある「彼方の景色」はどんな楽曲ですか。
桜木輝彦の原動力は、怒りや憎しみ、トラウマといった負の感情なので、楽曲にもそこが反映されていてすごくエネルギッシュです。歌詞は、演出の倉持(裕)さんが手掛けてくださいました。桜木が見ている景色や感情をつづっているので、言葉もすごく強い。桜木の復讐(ふくしゅう)劇の始まりの合図のようなパワフルさを感じる楽曲と歌詞になっています。
-LPレコードの発売というのも珍しいですが、今はアナログレコードもはやっていますね。
僕も音楽が好きで、レコードプレーヤーを買ったぐらいなんです。以前、『坂道のアポロン』という映画に出演させていただいたのですが、そのときに、作中でレコードに触れる機会が多くあったので、それがきっかけで家でも聞きたいと思うようになりました。ただ、僕は凝り性なので、一度手を出したら、とことん集めてしまうので(笑)、タイミングを探していたのですが。この作品に出演することが決まったご縁もあって、今年に入ってからレコードプレーヤーを買いました。まだレコードはそれほど多くはないですが、休みの日にはレコード屋さんを巡ったり、知り合いから頂いたレコードを聞いています。
-歌うことも好きなのですか。
歌うことも好きです。自分でギターを弾いて、小中学生の頃から歌っていました。
-本作に向けて、1年半前からボイストレーニングにも通っていたそうですね。
技術的なことを学ぶためというよりは、体の耐久性を上げることを重視してトレーニングをしてきました。今回、全部で48公演あるので、歌って、芝居を続けるためには、それに耐えられる発声や呼吸、体の使い方などを体得する必要があります。稽古に入って、トレーニングの成果を感じながらも、まだまだだと思うところは進化していかなければいけないなと思っているところです。
-本作は、中川さんにとって挑戦の多い作品だと思いますが、挑戦することは好きですか。
そうですね。10代の頃からずっと挑戦し続けていると思います。この仕事は飽きてしまったらできない仕事だと思っているので、やったことがないことにチャレンジしていきたいと思っています。見てくださる方にも驚いてほしいですし、自分も驚きたいし、発見したい。成長や発見は新しいチャレンジの中にこそあると思っているので、これからも新しいことに挑戦していきたいです。
-今後はどんな挑戦をしたいですか。
2023年放送のショートフィルムで監督をやらせていただくことになりました。それも僕にとってはとても大きなチャレンジです。小さい頃から、僕は役者として人前に出る立場でしたが、ずっと裏方のお仕事にも興味がありました。なので、役者ではなくとも何かしらの形で、エンターテインメントを作る仕事に関わっていたいと思っています。
-今回のインタビューの中で、「凝り性」だと言っていましたが、自分では、自分のことをどんな性格だと思っていますか。
占いによると、「めちゃめちゃ繊細」らしいです(笑)。
-自分でもそう思う?
自分が安心できる場所なのか、そうではないのかというのがはっきりしているとは思います。それから、周りの人に対して気を使い過ぎてしまって疲れてしまうこともあります。
-改めて、公演への意気込みを。
音楽も歌もダンスもあって、何よりも血生ぐさい人間ドラマもある、さまざまな要素が詰まった作品になると思います。華やかで、ものすごいエネルギーにあふれている昭和の芸能界にタイムスリップしたかのような体験を味わってもらえるように頑張ります。
(取材・文/嶋田真己、写真/小宮山あきの)
音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」は、11月6日~30日に都内・明治座ほか、福岡、大阪で上演。
公式サイト https://www.sanjushi2nd-2022.com