撮影:オフィシャル

秦の始皇帝陵から発見された兵馬俑をはじめ、春秋戦国・漢時代を含めた約200点の文物が来日。「日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産」として、11月22日から翌年2月5日まで、東京・上野の森美術館で開催される。そこで展覧会ナビゲーターと音声ガイドを担当する谷原章介に、本展の魅力を語ってもらった。

漫画やゲームをきっかけに、昔から古代中国史に強い興味があったと言う谷原。当時の中国について、「やっぱりスケールが違いますよね」と切り出す。「自分が死んだあとにあれだけのことを成し遂げられた、やらせることが出来たわけですから。その権力の大きさは、この展覧会からもひしひしと伝わってくるものがあります。それこそ兵馬俑がバーッと並んでいる現地の写真を見た時、この人はなんてことをやったんだ!と驚かれた方も多いのではないでしょうか。同じころ日本では、やっと稲作を覚えたくらいですから(笑)。それほど当時の中国というのは、間違いなく世界で一番文明が発達し、国力が強い国だった。本展ではその一端をご覧いただけると思います」

展覧会の理解をより深めることが出来るのが、谷原が担当する音声ガイド。その収録では、「あまり声を張らず、ぼそぼそっと話すことを意識しました」とのこと。これだけスケールの大きな展覧会であれば、その逆でも良さそうだが…。「一級の美術品が並ぶわけですから。悠久の時を経て、ここまで残り続けてきた国宝級の文物というのは、もうそれだけで断然説得力があるんですよね。お客様にしても、スポーツ観戦時のように高揚しているわけではなく、すごく静謐な気持ちでご覧になっているはず。その気持ちに寄り添うには、僕も静かに、落ち着いたトーンでガイドした方がいいだろうと思いました」

これまでも好評を得てきた兵馬俑の展覧会だが、今回は36体もの兵馬俑が来日。過去最大級のスケールを誇る。「今って記憶もスマホ、記録もスマホ、調べ物もスマホと、なんでもスマホを通してしまいますよね。でも実際にこういった本物の文物を目の前にすると、そのエネルギーに圧倒されると思うんです。しかも今回は位の高い将軍俑の中から、これまで来日したことのない一体が展示されます。ぜひそのすごさを生で体感していただきたいですね。別に無理に歴史を学んだりする必要もないですし、純粋に楽しんでいただけたらと。でも…もし詳しく知りたいという方がいれば、ぜひ音声ガイドを利用してみてください!」

取材・文:野上瑠美子