MUCC

MUCCが20年にわたって作り上げてきた磁場に集った錚々たるアーティストたちによるトリビュートアルバム『TRIBUTE OF MUCC -縁[en]-』。

そしてその参加バンドたちによるトリビュートアルバム対バンツアー『えん7』が12月27日、東京・日本武道館にて開催された<20TH ANNIVERSARY MUCC祭「えん7 FINAL」in 武道館>で無事フィナーレを迎えた。その模様をレポートする。

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シド

トップバッターをつとめたのはMUCCの直接的な後輩にあたるシド。

開演予定時刻直前に『ホムラウタ』のイントロが流れ始めると、フロアがざわつき始める。特効と共にイベントがスタートし、ダンサブルなシドのSEに切り替わる。

ゆうや(Dr)、明希(B)、Shinji(G)、そしてマオ(Vo)がステージに登場。軽快なロックチューン『Dear Tokyo』からスタートし、「シドファン、見せ所だ!」というマオの言葉に導かれ大きなシンガロングが巻き起こる。その声に満足したように「逢いたかったよ!」とにこやかに微笑むマオに対し、フロアからは黄色い悲鳴があがっていた。

『one way』では広いステージをアグレッシブに動き回る明希、Shinji。そして彼らの代表曲のひとつである『嘘』では、甘く切ないメロディーが武道館いっぱいに広がっていく。

MCで、「MUCCは20周年、シドは14周年なんですけど、この間隔は一生埋まることなく、俺たちはMUCCの背中を追いかけていくんで、応援よろしく」と語り、トリビュートアルバムに収録されている『暁闇』を披露。MUCC同様、昭和歌謡的な要素が根底にある彼らならではのカバーにフロアは大いに盛り上がる。

お祝いに来ているのはもちろんだが、これはイベント故に「ケンカを売りに来ている」というマオ。後輩だからといっても、当然遠慮も配慮もなく全力で『プロポーズ』『眩暈』で駆け抜けた。

頼もしい「後輩」であり大胆不敵な「好敵手」であるシドの存在感を、これでもかと見せつけたステージだった。なお、本日発売というDVDと来年のツアーの告知も忘れないマオであった。(F)

矢野 絢子

矢野絢子

2番手に登場したのはMUCCと同じく昨年20周年を迎えた矢野絢子。今回7回目の開催となったこのイベント「えん」だが、MUCCと矢野は2010年に行われた「えん5」以来の共演となる。

武道館の広いステージの中央にピアノが置かれ、大きな拍手で迎えられた矢野は不協和音を奏で、ゆっくりとポエトリーリーディングのように始まったのは、トリビュートアルバムに収録されている『リブラ』。曲が進むとともに、絶望に満ちた赤から希望に溢れた白に変わっていくライティングと、どこまでも伸びていく声が印象的であった。

ピアノと声だけで紡がれる世界は『ニーナ』へと続く。紙芝居をめくるように読み進められていくニーナと名付けられた椅子の一生を描くこの曲は、まさに「えん」という公演名にふさわしい椅子とそれにまつわる縁を歌ったもので、全ての点がひとつの線に繋がった瞬間、武道館の空気が変わったのをたしかに感じた。

「MUCCさんおめでとうございます。MUCCさんも20周年、私も実は20周年ということで、良い音楽をこれからもずっと続けていけたらええなと思ってます。」と述べ、続けて「外のテントでCDを売ってます。」と小声でアピールするお茶目な一面も見せ、ラストナンバー『汽笛は泣いて』をもって緊張感の中にどこか心地よさを感じるピアノと声だけの世界に幕を下ろした。

最後に客席に向かって投げキスをし、大きく手を振って退場するキュートな矢野に向けられた拍手の大きさは、彼女を迎え入れたときのものよりさらに大きいものになっていた。(O)

DEZERT

DEZERT

暗転するやいなや怒号のような歓声があがり、3番手として迎えられたのはDEZERT。MUCCのミヤ(G)が主催するイベント「COMMUNE」にも皆勤賞で参加し、逆に昨年はDEZERTの主催フェス「This Is The “FACT”」にMUCCを招くなど、もはや先輩と後輩という間柄には収まらない関係になりつつあるDEZERTとMUCC。

フロアに対して中指を立てながら千秋(Vo)が登場し、ほかのメンバーが登場するのを待たずしてトリビュートアルバムでもカバーした『アカ』をワンフレーズ弾き語りで演奏。途中、Miyako(G)とSacchan(B)とSORA(Dr)がゆっくりと定位置につき、バンドインすると楽曲はより鬱々としていき、その雰囲気は『「擬死」』へ続く。

「この眼が見えなくなるまで僕は叫んだ。」と歌う『アカ』と、「目の前がもう見えないから」と歌う『擬死』、別のバンドの曲であるのに不思議と話が繋がって聴こえるのは、MUCCとDEZERTから似たにおいを感じるからかもしれない。

千秋は「暴れたい奴、遊ぼうか!」と煽り、『「変態」』ではウォールオブデスを巻き起こし会場の熱をぐっと上げ、さらに「生きてるかい? よかった。僕も生きてる。」と会場に投げかけ、もう一度「生きてる!」と叫んで生を噛みしめるように始めたのは『「ピクトグラムさん」』。曲中では「不安定でいい。孤独だって、いま僕が自分を愛せるなら。」と歌い、最後を「僕たちのこの鼓動はまだ動いている。」と締めくくった。

セットリストの前半と後半で、絶望と生のコントラストがより色濃く出たアクトだったように思う。千秋は「また、生きてるうちにお会いしましょう。」と言い残して去って行った。(O)