サン=テグジュペリの『星の王子さま』の世界をダンスで描く、KAAT DANCE SERIES『星の王子さま サン=テグジュペリからの手紙』を2023年1月21日(土)からKAAT神奈川芸術劇場で上演する。

本作は、森山開次が演出・振付のもと、名著『星の王子さま』を身体表現で描いた作品として2020年11月に初演された。言葉に重きが置かれた作品を身体で表現するという挑戦は、美術・衣裳・音楽各々のアーティストによる豊かな表現も相まって、独創的な世界観を生み出し、観客を魅了。コンテンポラリーダンスとしては異例の満員御礼となった。今回はその再演となるが、新たな出演者や創作が加わる予定だという。

再演にあたって、森山は「大枠としては初演でやったことをそのままやっていきたいと思っていますが、演者たちのより深く、より豊かな表現を生かしていきたいとも思っています」。そして「言葉が大切にされていて、その言葉のファンも多い作品をダンス化していくわけですが、筋書きをなぞるだけの作品にならないように。ダンスだからこそできる豊かな表現を通じて、お客様がいろいろな言葉を見つけていく……。そんな作品になったらいいなと思っています。僕たちが発する身体にナンセンスな動きもたくさんあるでしょう。でも、お客様がその動きから言葉を見つけ出していくというやり取りこそが重要なんです。僕たちがたくさんの想像を膨らませて『こんなつもりでやるから見てね』『どういうふうに見える?』という問いかけをしていけば、きっとお客様が本では感じられない、ダンスの舞台だからこそ感じる『星の王子さま』が作れるのではないかと」。

初演についても「演者の豊かな身体表現を殺さないように、想像力やそのときに感じたリアルを大切にして、身体を型にはめないような振付や演出にしたつもり」と振り返る森山。「スタッフもダンサーも僕が絶大な信頼をしている素晴らしいメンバーがそろって、むしろあの座組みで失敗はできないなという心配はありましたが、みんなの想像力に助けられながら、舞台を作り上げることができました」。

2023年はコロナ禍が収まっているだろうか。観客へのメッセージとして森山は「コロナ禍で旅することがなかなかできない時間が長かった。この物語はサン=テグジュペリが飛行機で遠い土地に降りたところからスタートして、いろいろなことを発見したり、振り返ったりする、旅の物語とも言えます」。そして「普段生活の中で見落としている大切なものを、旅することで気づけるという物語の構成。ぜひお客様には劇場に旅をするようなつもりで見にきていただき、楽しんでほしいです。きっと本を読むのとは違った『星の王子さま』を体験いただけると確信しています」。

公演は1月29日(日)まで。

取材・文:五月女菜穂