アートとコンテンポラリーダンス界隈で熱い注目を集めている敷地理。武蔵野美術大学と東京藝術大学大学院で現代美術を学び、横浜ダンスコレクション2020コンペティションⅠで「若手振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞し、新しいパフォーミングアーツの可能性を示す存在として着実に歩みを続けている。そんな彼の新作「unisex #01」が上演される。

「渡仏以前から考えていたテーマでもあり、ファッション用語としての“ユニセックス”というものが創作のはじまりでした。これまでコンテンポラリーダンスの領域で見られてきたようなジェンダーを扱った作品とは違う視点、立ち位置による作品を作ってみたいと思っていたこともあり、このユニセックスという匿名性をはらんだ観点からそれができるのではないかと考えたのです」

在日フランス大使館賞を受賞した敷地は2021年6月から3カ月間、フランス国立ダンスセンターにレジデンス。そこで出会った韓国出身のアーティスト、イ・ソヒョンと共に、兼ねてから思い描いていた題材によって作品を作り上げた。二人の人間が、“身体”そのものを空間に刻み込むように、力強い接近と別離を繰り返していく。ドラマ性を感じるが、どのようなインスピレーションがあったのだろうか。

「今回、具体的なイメージや演劇的手法は取り入れていないのですが、創作のインスピレーションの一つには、両性具有の神を題材としたギリシャ神話があります。もともとひとつだった身体が分裂し、欠けている部分を補完するように引きつけ合い、完全な身体に戻ろうとするもので、ここにある“マグネティズム”は作品のキーワードの一つになっています」

さらに敷地の作品ならではの特徴として、空間、さらには観客も巻き込む形で作品が作り上げられている。今回、その一つのツールとして用いられているのが音楽。ショパンのピアノ曲を通して演者と聴衆が一つの空間を共有することができる。

「ショパンの《ノクターン第2番》の右手と左手を分けて録音したものを皆さんに聴いて頂きながらパフォーマンスを行っていきます。ただ、我々がその音に合わせて踊る、というわけではありません。音そのものもパフォーマンスの一つとして機能していくものです。今回の作品は、物語や写実的な表現をしているものではなく、広がる空間を“体験”するような感覚で鑑賞して頂けたらと思っています。皆さんの身体がもつ感覚を研ぎ澄ませて感じたものを味わっていただきたいです」

文:長井進之介