阿炎 (C)日本相撲協会

『大相撲十一月場所』で賜杯を手にしたのは平幕の阿炎だった。『七月場所』後に右ひじと左足首を手術し、『九月場所』を休場した阿炎は平幕9枚目で『十一月場所』に臨んだ。思い切りのいい押し相撲で白星を重ね、9日目錦富士、10日目竜電に連敗するも、11日目に王鵬を突き出して勝ち越しを決めると、若隆景、豊昇龍の両関脇も撃破。千秋楽には優勝争いを引っ張っていた高安を突き倒して12勝3敗、大関貴景勝をまじえた優勝決定巴戦に持ち込んだ。28年ぶりに行われた巴戦では本割に続き、阿炎が高安に連勝。脳震とうを起こし土俵にうずくまる高安を心配そうに見守っていたが、集中力を切らさず。続く貴景勝との一番では素晴らしい立合いを見せながら、一瞬足を滑らせひやりとするも、すぐに態勢を立て直して押し出した。

新型コロナウイルス対応ガイドライン違反により、3場所出場停止処分を受けて幕下からやり直した昨年の『三月場所』。今年の『一月場所』では2場所連続となる12勝3敗の星を残し初めて殊勲賞を獲得。そして休場明けの『十一月場所』で涙の初優勝を遂げたのだった。優勝インタビューで体調不良で入院している錣山親方について問われると、阿炎は「本当迷惑しかかけてこなかったので、少しでも喜んでくれたらいいなと思います」と目頭を押さえた。

今年は31年ぶりに6場所すべてで優勝力士が異なる結果となった。『一月場所』は御嶽海、『三月場所』は若隆景、『五月場所』は照ノ富士、『七月場所』は逸ノ城、『九月場所』は玉鷲、『十一月場所』は阿炎である。3場所連続平幕優勝は史上初。途中休場した『九月場所』に続き、『十一月場所』も休場した横綱照ノ富士の両ひざの古傷の回復具合が気になるところ。そんな中、初優勝を遂げた阿炎に3場所連続二桁勝利の貴景勝、大関復帰を視界にとらえた高安、三役で勝ち越し来年につなげた若隆景、豊昇龍、霧馬山、さらに『一月場所』での新三役を睨む琴ノ若、明生ら主役候補は多士済々。

果たして、来年は土俵上でどのような戦い模様が繰り広げられるのか。『大相撲一月場所』は1月8日(日)・両国国技館で初日を迎える。『一月場所』のチケットは12月10日(土)午前10時より一般発売。