
英国不条理演劇の大家であるハロルド・ピンターが描いた舞台『The Birthday Party』が2022年12月17日(土)から新宿シアターモリエールで開幕する。
今回の上演は、俳優・北野由大率いる演劇ユニット「僕たち私たち」と、演出家・松森望宏率いる演劇ユニット「CEDAR」が共同で企画したもの。
海辺の町でメグ(藤田朋子)とピーティ(大森博史)の家に下宿しているスタンリー(渡邊りょう)。彼の元へ突然、ゴールドバーグ(大鶴義丹)とマッキャン(北野由大)という紳士が訪ねてくる。その2人を避けるスタンリー。その日はスタンリーのバースデイらしく、急遽バースデイパーティをすることに。次第に2人に追い詰められていくスタンリー。なぜ2人はやってきたのか……2人は何者なのか……。
「ハロルド・ピンター、すごく面白いです」と切り出すのは、ゴールドバーグ役の大鶴義丹。「やっぱり戯曲は大事だなと改めて思いました。戯曲の面白さで、舞台の面白さが6割、7割ぐらい決まってくる気がする。今回の作品は、一人ひとりがやる芝居はすごくシンプルなんですが、それが積み上がっていくと、人間ドラマの渦ができて、複雑な迷路のような話になっていく。そこがまた面白い」と話す。
初の不条理劇に挑戦するメグ役の藤田朋子は「お茶の間臭さが出ている私のような俳優が不条理劇をやっていいのかなという思いがあった」と思いを明かす。「でも企画書からCEDARの熱意を感じたし、稽古では話し合いの時間を長く取ると聞いて。飛び込んでみようと決めた」。稽古でもフラットな関係性で創作をできているといい、「豊かで濃厚な時間を過ごしています。『不条理劇は分からない』と思っている方がいたら、その思いを覆されると思いますし、今まで見てきた不条理劇とは違うものが多分観られると思います」。
マッキャン役の北野由大は、演出の松森望宏とともに英国で本作を観たことがあるといい、「言葉は全く分からなかったけれど、面白すぎて2回も観ました」。不条理劇の面白さについて北野は「余白がいっぱいあるんです。余白があるから、役についての想像が広がったり、観た人が自分の人生だったら……と置き換えができたり。普通のお芝居は点と点の距離が近いんですけど、不条理劇は点と点の距離が遠い。それをつなげるのが不条理劇の面白さでもあり、難しさでもあると思います」と語った。
公演は12月25日(日)まで。
取材・文:五月女菜穂