毎年恒例の南座・お正月公演の松竹新喜劇。今年はAプロ・Bプロの2部制で上演する。Aプロ『下町の友情』は親の代からのケンカ友達、クリーニング屋と炭屋の友情を描く人情喜劇。Bプロ『流れ星ひとつ』は家族のために婚期を逃した娘と娘の幸せを願う父親の、切なくもユーモアに満ちた家族の物語。芝居に続き、2演目とも渋谷天外、藤山扇治郎、久本雅美による新春の挨拶がある。この3人が顔をそろえる取材会が開催、作品の演目や役柄への意気込み、また卯年の来年に向けてそれぞれの目標と“飛び越えたいこと”を語った。
お正月公演に選んだ2演目の理由を「『下町の友情』は、ぱぁ~っと派手。『流れ星ひとつ』は、新年の幕開けに女性の方たちにほっこりしっとりして帰っていただこうと。どちらも人情芝居のルーツのような作品なので」と天外。また今回は2作品とも初タッグの演出陣に。『下町』は漫才コンビ、令和喜多みな実であり、劇団コケコッコーを主宰する脚本・演出・俳優の野村尚平、『流れ星』はプラチナ・ペーパーズを立ち上げ、松竹作品も多数手掛ける堤泰之がそれぞれ初演出。「次の世代の演出家と一緒にやりたい。僕たちにもきっと刺激になる」と「激論を戦わせて」天外の提案が実現した。
『下町』にはクリーニング屋の主人に天外、その息子に扇治郎が出演。「泣いて笑っての、新喜劇の十八番。心の底のつながりをケンカの笑いを散りばめて描いていますが、最終的に人間のもつ人情が表せたら。キレのあるお芝居が出来るとうれしい」と体力を心配しつつの天外。扇治郎は「すごくおもしろくて、たいくつするところがない作品。新喜劇で一番多くさせていただいている役ではないかと。たまに見る夢に出てくる天外さんはいつもクリーニング屋で(笑)」と言うぐらい印象が強い作品だそう。
初めて『流れ星』に挑む久本は、婚期を逃した長女の役で「難しいですけど、ユーモアたっぷりの中に千代子ちゃんの可愛らしさや切なさが表現できたら。女性の方が観たら、こういう女心を『あぁ、わかるなぁ』って思うんじゃないかな。お正月にふさわしく『ええ時間やったな』と言われるお芝居になるよう頑張ります」。来年の目標は「健康第一、家庭円満。コロナで増えた体重を落とす。頑張って飛び跳ねるようになりたい」(天外)、「松竹新喜劇で日本中を飛び回りたい。で、生意気ですけど、新喜劇を支えていけるように自分も成長できれば」(扇治郎)、「健康第一。飛び越えるより、むしろ誰でもいいので私のところへ飛び込んできてほしい(笑)」。
公演は1月2日(月)から9日(月)まで、南座にて。チケット発売中。
取材・文:高橋晴代