カメラマン:源賀津己
ヨーロッパ企画とニッポン放送が贈るエンタメ舞台シリーズの第三弾、『たぶんこれ銀河鉄道の夜』が今春、開幕する。作・演出の上田誠(ヨーロッパ企画代表)が立ち上げるのは、宮沢賢治の傑作『銀河鉄道の夜』をファンタジー×コメディ×音楽で大胆アレンジした劇世界だ。
「『銀河鉄道の夜』という作品の凄さは“鉄道が銀河を走る”という発想の大勝利とも言えるキャッチーさ、そしてキリスト教的な死生観にもつながる深いテーマをファンタジックに描いている点だと思うんですね。僕はファンタジーやSFが大好きなので、ぜひ一度やってみたかった。夜テイストの音楽に乗せてポップに描けるんじゃないかなと」(上田)
現代に生きる主人公・ナオは、ふとしたことから“自己犠牲に向き合った人が乗れる”銀河鉄道に乗り込むことに。次々に出会う乗客たちに揉まれるうちに、いつしかデスゲームに巻き込まれ…!?今夏の舞台『VAMP SHOW』で魅惑の存在感を放って印象を残した俳優、久保田紗友が「コメディに少しだけ苦手意識がある自分にとって絶対にスキルアップになる舞台、ぜひやりたい!と思いました」と意欲満々、ナオ役に挑む。
「上田さんが作る劇世界は、笑いにならないようなことを笑いにしてしまう、複雑なことをシンプルに面白く表現しているところが凄いな!と思います」(久保田)
「久保田さんは、真っ直ぐな気持ちで仕事に取り組まれる方なんだなと。『銀河鉄道の夜』には宮沢賢治の野心的な企みと同時に、「幸せを求めるにはどう振舞うべきか」という作者の真摯な視点が感じられます。ひたむきさ、清廉さのある主人公じゃないと真摯なテーマ&エンタメ性のある作品は乗りこなせない。久保田さんならデスゲームに打ち勝ってくれそうだなと思いました」(上田)
“負けず嫌い”“忍耐強い”と、久保田から自己分析ワードが出ると、「なるほど、今聞いたことを台本にフィードバックしよう」と上田がほくそ笑む。「え、軽はずみな発言は出来ないですね」と笑う久保田に、上田は「いやいや、稽古場ではどんな軽はずみもOK!」。会話リズムの小気味良さに、舞台に懸ける同等の熱量が伝わって来る。初タッグの化学反応で寓話の傑作がいかなる変貌を遂げるのか、注目必至である。
「テーブルワークをたくさんやって、上田さんと出演者の皆さんとのコミュニケーション、その繋がりを大切にしたい。新しい形の『銀河鉄道の夜』は今の時代だからこそ響く内容になるのでは。普段は慎重だけど、大胆に演じられたらいいなと思います。」(久保田)
「えっ、『銀河鉄道の夜』でこんなことしていいの!?ってアレンジになっていますが、名作の本質をちゃんと捉えつつ、人間の深いテーマを大逆転で超エンタメに仕上げられたらと思っています」(上田)
取材・文 上野紀子







