“降り止まない雨”をテーマに描かれたソングサイクル・ミュージカル「雨が止まない世界なら」in Concert。1月6日(金)に行われた昼公演・夜公演の模様を収めた配信アーカイブが2月17日(金)まで視聴可能だ。
ある日降り始めた奇妙な雨がずっと降り止まなかったら、人は何を歌うだろう…。ソングサイクル・ミュージカル「雨が止まない世界なら」は、"雨が降り続ける世界"で、様々な場所から同じ雨を見ている人々のストーリーを描いていく。2021年、コロナ禍に誕生した本作は、ポエトリーリーディング、ワークショップ、コンセプトアルバムを経て、2023年1月に大手町三井ホールでコンサートの開催が実現した。
出演は、小此木麻里、昆夏美、咲妃みゆ、清水彩花、清水美依紗、鈴木壮麻、染谷洸太、塚本直、西川大貴、畠中洋、山野靖博、吉沢梨絵、そして雨が止まない合唱団(内海湧真 河本雪華 小林謙真 佐藤孔明 二宮伶寧 平賀晴)。
豪華なミュージカル・スターが集結した本コンサート。『雨に唄えば』を彷彿とさせる晴れやかな楽曲「We’re Singin’ in the Rain」を昆夏美が軽やかに歌い上げたかと思えば、鈴木壮麻が「知ろうとしない」で会場を怪しげな雰囲気で包み込む。
西川大貴が歌う「舟を漕ごう」は、雨が止まない世界に新たに出来た職業・水上タクシーの運転手が主人公。ソングサイクル・ミュージカルということで、同じ"雨が降り続ける世界"の中で生きる様々な主人公が登場するのが本作の特徴だ。
病室の窓から変わっていく世界に希望を見出す少女の歌「海に潜ったクジラ」では、コンサートながら清水美依紗が演技力溢れる歌声で圧倒。
一方、“もう進みたくも変わりたくもないの本音は 変わってしまう事が多すぎて”と、急速な周囲の変化に追いつけない気持ちを吐露する楽曲「東京漂流」は、咲妃みゆが涙ながらに力強く歌唱した。
コロナ禍での社会の変化はもちろんのこと、世界情勢の変化、SNS等で他人の変化を感じることも多い現代の私たちにとって、本作には他人事とは思えない歌詞が詰まっている。多様な楽曲の中から、自己投影できる一曲が見つかるはずだ。
作詞・構成は、ミュージカル『ミス・サイゴン』トゥイ役など俳優としても活躍する西川大貴。作曲・音楽監督はジャズ・ピアニストの桑原あいが務める。
また、夜公演では大手町三井ホールのガラス張りのステージを活かし、東京・大手町の夜景をバックに歌唱。景色という自然の演出が加わることで、新たな楽曲の印象が加わることも、本コンサートの興味深い点である。
「雨が止まない世界なら」in Concert、配信アーカイブのチケットは2月17日(金)まで販売中。
文:齋藤優里花(演劇メディアAudience)