トニー賞6部門とグラミー賞2部門を受賞、2006年にはビヨンセ主演で映画化され大ヒットと、ミュージカル史に輝かしい足跡を残す『ドリームガールズ』。初の「日本オリジナルキャスト版」が2月5日(日)、東京国際フォーラムで幕を開けた。主演は、圧倒的な歌唱力で宝塚歌劇団退団後も話題作に出演が続く望海風斗。さらに福原みほと村川絵梨(Wキャスト)、sara、spi、岡田浩暉、駒田一、内海啓貴、なかねかなら、歌声の豊かさ・表現力共に最強のキャストがそろった。本ニュースでは村川エフィ版のゲネプロの様子をお届けする。
1960年代のアメリカ。ディーナ(望海)とエフィ(村川)、ローレル(sara)は、スターになることを夢見てNYにやってくる。コンテストでは優勝できなかったものの、才能を見抜いたカーティス(spi)の手腕で、人気シンガーのジェームズ・“サンダー”・アーリー(岡田)のバックコーラスになった3人。カーティスの強引なやり方にジェームズのマネージャー・マーティが困惑する中、エフィの弟で作曲家のC.C.(内海)と共にヒット曲を連発するディーナたち。だがカーティスがソロデビューの条件として告げたのは、「リードシンガーをエフィではなく美しいディーナに替えること」だった……。
望海は都会に出て来たばかりの初々しい様子から、次第にスターの階段を上ってゆくディーナの成長を繊細に表現。真面目な性格だが、いったんステージに立てばまばゆいばかりの存在感を放つディーナ役は、まさにハマり役だ。エフィ役の村川も、歌・芝居共にディーナに一歩も引かない構え。名ナンバー「One Night Only」のシーンをはじめ、陰影ある演技で魅せた。ローレルを演じるsaraもミュージカル界のホープだけに、歌唱力はお墨付き。一番年下の設定ということもあり、弾けるような可愛らしさに目を奪われた。
野心のためには汚い手も使うカーティスを魅力たっぷりに演じたspiや、スターの悲哀を鮮やかに浮き彫りにした岡田、プライドに揺れるマネージャーを味わい深く演じた駒田など、男たちの厚みのある佇まいも印象的。作曲家ながらエフィの家族として葛藤するC.C.役の内海、追加メンバーとなるミシェル役のなかねかなまで、全員が圧巻の歌唱力で最後まで駆け抜ける。ショーシーンはもちろん、エフィとカーティスたちが口論するナンバーなども思わず引き込まれて息つく暇もないほどだ。
演出は、劇団俳優座の演出家で、外部作品でも丁寧な人物造型が高い評価を得ている眞鍋卓嗣。本作では舞台上に一段高くなった「盆」(回り舞台)を設置し、時には「ステージ」に見立てて、「Dreamgirls」など名曲のショーシーンをたたみかけるように見せてゆく。次々と着替える(舞台上での早替りも!)ディーナたちの華やかなドレス(衣裳:有村淳)にも注目だ。
回る「盆」は、きらめく音楽が現れては消えてゆくターンテーブルのよう。エンタメ界の光と影を映し出す『ドリームガールズ』ならではの演出と感じた。
取材・文/藤野さくら