映画『迷子の警察音楽隊』を原作に、米国トニー賞10部門を独占したミュージカル『バンズ・ヴィジット』が2月7日(火)から日生劇場ほかで上演される。

ペタ・ティクヴァのアラブ文化センターで演奏会に招かれていた、エジプトのアレクサンドリア警察音楽隊。イスラエルの空港に到着するも迎えが来ない。楽隊長のトゥフィーク(風間杜夫)は自力で目的地に行こうとするが、若い楽隊員のカーレド(新納慎也)が聞き間違えたのか、彼らの乗ったバスは、目的地と一字違いのベト・ハティクヴァという辺境の街に到着してしまう。一行は街の食堂を訪れるが、もうその日はバスがない。食堂の女主人ディナ(濱田めぐみ)は、街にはホテルもないので、自分の家と常連客イツィク(矢崎広)の家、従業員パピ(永田崇人)と店に分散して泊まるよう勧める。迷子になった警察音楽隊は、翌日の夕方に行われる予定の演奏会に間に合うのだろうか......というストーリー。

今回、イツィク役を演じる矢崎は、役について「夫婦関係におけるダメな夫をまとめたような人物。女性からすると、イツィクの妻のイリスの気持ちがとても分かるそうなんですが、僕は僕でイツィクの気持ちが分かる。彼は、別に家族のことを思っていないわけではないし、働きたくないわけでもないし、夢があるし、いろいろと考えてはいて......まだ大人になりきれていない自分がいるだけなんですよね」と分析。「後半には素敵なナンバーがある。イツィクも現場には満足していなくて、やるせなさや虚しさを抱えている男なんだなというところに着地できたら」と話していた。

稽古は「順調すぎるぐらい早く進んでいる」と話す矢崎は、演出の森新太郎を「陶芸家」と表現する。「森さんは1回作品を作るんですけど、そのあとバーンと壊すんですね。そして練りに練って、また新しく作る。“粘土”である僕ら俳優はもうぐにゃぐにゃなんですけど(笑)、練ることで、どんどんいい粘土になっていくのだろうなと思うんです。そうして出来上がった作品をお客様がどう感じるのか。その反応が楽しみです」という。

2023年最初の舞台。「怖がらずに何でも突き進んでみようかなと。僕自身がパワーアップをして、変化を感じる一年にしたいです」と今年の抱負を語りつつ、「素敵な作品でスタートできることが嬉しいです。いろいろある世の中ですが、こんな世の中だからこそ、国が違う人々の交流を描いた『バンズ・ヴィジット』という作品は心に染みると思うし、強いメッセージを感じてもらえるはず。劇場でお待ちしています」。

東京公演は2月7日(火)から23日(木・祝)まで。大阪公演は3月6日(月)から8日(水)まで、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ。愛知公演は3月11日(土)・12日(日)、刈谷市総合文化センター大ホール。

取材・文:五月女菜穂