2007年に公開された映画『迷子の警察音楽隊』を原作に、2018年に米国トニー賞10部門を独占したミュージカル『バンズ・ヴィジット』が2月7日(火)から日生劇場ほかで上演される。

ペタ・ティクヴァのアラブ文化センターで演奏するようにと招かれていた、エジプトのアレクサンドリア警察音楽隊。イスラエルの空港に到着するも、いくら待っても迎えが来ない。楽隊長のトゥフィーク(風間杜夫)は自力で目的地に行こうとするが、若い楽隊員のカーレド(新納慎也)が聞き間違えたのか、案内係が聞き間違えたのか、彼らの乗ったバスは、目的地と一字違いのベト・ハティクヴァという辺境の街に到着してしまう。一行は街の食堂を訪れるが、もうその日はバスがない。食堂の女主人ディナ(濱田めぐみ)は、街にはホテルもないので、自分の家と常連客イツィク(矢崎広)の家、従業員パピ(永田崇人)と店に分散して泊まるよう勧める。迷子になった警察音楽隊は、翌日の夕方に行われる予定の演奏会に間に合うのだろうか......というストーリー。

今回、パピ役を務める永田は「自分が想像していたパピ役のイメージが尽く崩されていくので、僕自身が『迷子の警察音楽隊』になってしまっています」と稽古に苦戦している様子を明かす。演出を務める森新太郎からのオーダーは「いい意味で気まぐれ」という。「『昨日と言っていることが全然違うことじゃん!』と思うこともあるし、見えないゴールを追いかけている感じがするんですが、森さんが『今欲しい』と思うことに嘘はない。森さんに言われたことを骨組みにして、役を作り上げている最中です」と話し、「作っては壊し、作っては壊しの連続。その分、きっと作品の厚みや強度が増すんだと思います」とも。

稽古場で、同じ福岡県出身で、絡みも多いディナ役の濱田めぐみとよく話すという永田。「濱田さんが出ている舞台は何度か拝見したことがあるのですが、舞台上では本当にすごいですよね。稽古場でお話すると、濱田さんは威圧感もなくて、優しくて。こんなに声を大にして『本当に素敵な方です』と言える人はなかなかいないです」と印象を語っていた。

観客へのメッセージとして、永田は「ミュージカルのような、ストレートプレイのような、今までとは全然違うジャンルの作品に仕上がっている気がします。“ボーダレス”な感じが面白い。誰もキラキラした衣装を着ていないし、カラフルな照明があるわけではないですけど、きっと心に残る作品になると思います」。

東京公演は2月23日(木・祝)まで。その後、大阪、愛知公演が予定されている。

取材・文:五月女菜穂