本多正信役の松山ケンイチ(左)と松平元康役の松本潤 (C)NHK

 NHKで放送中の大河ドラマ「どうする家康」。2月5日に放送された第5回「瀬名奪還作戦」では、織田方についた主人公・松平元康(後の徳川家康/松本潤)が、敵対することになった今川領から妻の瀬名(有村架純)を救出しようとする姿が描かれた。

 そのために呼び出されたのが、松山ケンイチ演じる本多正信。だが、石川数正(松重豊)、酒井忠次(大森南朋)ら、他の家臣たちから全く信用されず、結局、自ら発案した服部半蔵(山田孝之)率いる忍びを使った瀬名奪還作戦も失敗。先が思いやられる初登場となった。

 番組公式サイトの登場人物紹介にある「家臣団の嫌われ者」というキャッチコピーの通り、個性派ぞろいの元康の家臣団の中でも正信は異色の存在で、この回もニワトリの世話をしながら初登場するなど、早くも一癖あるところを見せつけた。

 近年の大河ドラマを振り返ってみても、「真田丸」(16)では近藤正臣が、「おんな城主 直虎」(17)では六角精児が正信を演じ、それぞれ個性的なキャラクターで印象を残している。瀬名奪還に再挑戦する次回以降、松山がどんな正信を演じてくれるのか。これからの活躍が楽しみだ。

 そしてもう一つ、正信の登場で期待しているのが、演者である松山と主演の松本との間に起きる化学反応だ。ご存じの通り、松山は「平清盛」(12)で1年間、大河ドラマで主役を務めた経験がある。

 本作出演者のうち、大河ドラマの主演経験者としては、他にも松嶋菜々子(於大の方役)、中村勘九郎(茶屋四郎次郎役)、岡田准一らがいる。

 中でも、織田信長役の岡田は、同じ事務所の先輩・後輩という関係で付き合いも長いことから、松本自ら出演を依頼したほど。

 そんな信頼を寄せる岡田の存在が、松本にとって心強い味方であることはいうまでもない。だが、信長は常に元康のそばにいるわけではないし、本能寺の変で退場することが分かっている。

 これに対して松山演じる正信は、番組公式サイトの人物紹介に「やがて天下取りに欠かせない男となる」とある通り、元康の側近として終盤まで行動を共にしていく。

 年齢的にも1983年生まれの松本と1985年生まれの松山は二つ違い(学年では一つ違い)と、年齢に幅のある家臣団の中でも一際近い立場にいる(家臣団の中では、山田孝之が松本と同い年)。

 同年代の大河ドラマ主演経験者が常にそばにいることは、初めての大河ドラマで主演を務める松本にとって、一種の安心材料にもなるのではないだろうか。

 そんな松山が、これから1年、松本と現場を共にする中で、何らかの化学反応が生まれることは間違いないだろう。

 第5回でも肩の力が抜けた軽妙な芝居で、人を食ったような正信のキャラクターを巧みに表現した松山は、同じ大河主演経験者である岡田とは違った新鮮な刺激を松本に与えてくれるはず。

 もしかしたら、松山の存在が松本から今までにない表情を引き出し、予想もしなかったような元康が見られるかもしれない。そんなことを期待しつつ、これからの本多正信=松山ケンイチの活躍を見守っていきたい。

(井上健一)