ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで創り上げるエンターテインメント集団「梅棒」による16th showdown『曇天ガエシ』が2023年3月10日(金)から東京・なかのZERO大ホール、16日(木)から新国立劇場中劇場ほかで上演される。

物語の舞台は、“オウゴン”の採掘により発展した「ジパングリ」。王の妻によるクーデターが勃発し、跡継ぎだったメツ王子は物心つかないうちに王宮を追われ、行方不明になる。それから十数年。女王の圧政に苦しむ人々の救いは、国からオウゴンを盗み出して民に分け与える義賊集団「マサゴ」だった。その中に、成長し街を飛び回るメツの姿が......。一方、武力で圧政を覆そうとするテロ組織「クニクズシ」も怪しい動きを見せていた。ある日、メツは女王の息子であるヌューダ王子と偶然街で出会い、運命の歯車が回りだす――。

本作は梅棒史上最大規模で、「サイバーパンクと和が融合するファンタジー超大作」という。初日まで1ヶ月を切った2月中旬、適切な感染予防対策を講じた上で、都内で行われている稽古を見学した。

よりスペクタクルな作品にするために欠かせない舞台装置。可動式の舞台セットを安全に動かすため、場面転換の確認から稽古が始まった。

梅棒の舞台を観たことがある人は想像がつくと思うが、梅棒作品はとにかく役者の移動が多く、いろいろな小道具が登場する。しかもすべてが曲あわせなので、一人一人の動きを細かく調整しないと、タイミングがズレたり、大変な事故につながったりしてしまう。それゆえ場面転換の確認はとても大事になってくるわけだ。「1,2,3,4……」とカウントを数えながら何度か動きを確認した後、実際の曲を流して再確認。何か不都合があった場合はどうしたら解決できるのか、メンバーが一丸となって意見を出し合っていた。

その後は、通し稽古。まだ初日まで1ヶ月ほど時間があるが、ここからブラッシュアップをするとはいえ、ほぼ全てのストーリーと振付が“完成”していたので驚いた。詳細な見どころや選曲は本番のお楽しみとしておきたいが、ゲスト出演するw-inds.の千葉涼平、元宝塚歌劇団の音くり寿、鳥越裕貴らがダンスだけでなく「芝居力」でストーリーを盛り上げていたし、IGのポールダンス、上西隆史のエアダンスなども相まって、振付もいつも以上に高難度なものばかり。梅棒作品の中でもここまでギャグ要素が少ない作品は珍しい気がするが、果たして本番ではどんな世界観を見せてくれるのか、ますます楽しみになった。

東京公演は3月10日(金)~12日(日)、なかのZERO大ホール。16日(木)~22日(水)、新国立劇場中劇場。大阪公演は3月31日(金)~4月2日(日)、森ノ宮ピロティホール。愛知公演は4月8日(土)、9日(日)、日本特殊陶業市民会館ビレッジホール。

取材・文:五月女菜穂