暴走族風のファッションをまとった子猫のキャラクターで80年代に一大ブームを巻き起こした「なめ猫」を舞台化した「なめ猫 on STAGE」が“猫の日”の2月22日(水)に新宿FACEにて開幕した。
脚本を「しずる」の村上純が執筆し、演出を村井雄(KPR/開幕ペナントレース)、さらに音楽を手島いさむ(UNICORN)が担当するという豪華布陣による本作。令和の現代を舞台に、昭和のロックをこよなく愛するバンド「not men not 4」、ヒップホップチームの「ゲルマウス」が学園祭でのステージに立つ1枠を争うという物語が展開する。
登場人物たちは、それぞれのファッションに身を包みつつ、全員が猫耳と尻尾を装着したなめ猫スタイル。舞台は現代だが、昭和のカルチャーに傾倒する「not men not 4」の面々の口からは昭和から平成にかけて流行した言葉やスタイルが次々と飛び出す。
「シャばい」「竹の子族」、さらには宮沢りえの主演ドラマのセリフなどなど、リアルタイムで80~90年代に青春を過ごした人にしかわからないような言葉が頻出! 一方で、学園祭のステージに立つバンドを決める方法がTwitterのリツイート数を競うというやり方であったり、練習に使っていたスタジオがオンライン予約を始めたために、ガラケーしか持っておらず、これまで当日に電話で予約をしていた「not men not 4」が全く予約が取れなくなってしまう、そしてネット用語の「草」など、令和の現代ならではのアイテムや言葉も数多く登場し「令和vs昭和」といった様相を呈す。
とはいえ、本作はいわゆる“ヤンキー”ものではない。「not men not 4」のメンバーたちも不良やツッパリでもなく、ただ昭和のロックを愛し、当時のスタイルをまねているだけで暴力的なケンカのシーンなどはなく、彼らが対峙するヒップホップグループ「ゲルマウス」も同様。原作のなめ猫は暴走族のイメージが強いが、令和の時代に合わせて今回のステージはアップデートされており、戦いはあくまでもバンド対決。終盤のあるシーンで、観客に対して「撮影OK!」と提示するというのも、SNS全盛の現代らしい仕掛けと言える。
そして、なんと言っても魅力的なのがライブシーン。冒頭の「not men not 4」のライブに始まり、中盤、そしてラストまで音楽シーンが満載だが、手島いさむが音楽を担当しているだけあって、楽曲のクオリティは一舞台作品の中にとどめておくにはもったいないほど。
昭和の懐かしさを感じつつ、ライブを堪能できる盛りだくさんな作品となっている。
「なめ猫 on STAGE」は3月1日(水)まで新宿FACEにて上演中。
取材・文:黒豆直樹