左から、桂吉弥、桂春蝶、春風亭一之輔 左から、桂吉弥、桂春蝶、春風亭一之輔

2022年4月4日、『MBSらくごスペシャル 春蝶・吉弥と一之輔 三人噺』がシアタードラマシティで初開催された。出演は次代の落語界の担い手と嘱望される東西の実力派3人。上方落語家の桂春蝶、桂吉弥と、江戸落語の春風亭一之輔が、それぞれ渾身の一席で満員のドラマシティを沸かせた。

『春蝶・吉弥と一之輔 三人噺 2023』チケット情報

まずはトークコーナーからスタート。一之輔は「みんなありがとー!」とコンサートのような掛け声で盛り上げる。作り込まれた手描きの舞台美術にも「めちゃめちゃすごい」と吉弥は感激。春蝶も舞台美術に仕込まれた演出に感心している様子だ。

トップバッターを務める吉弥は『愛宕山』を披露。「今日は2挺といって、三味線のお師匠さん二人に来てもらいました」と音曲効果の"はめもの”も豪華だと話す。マクラでは『愛宕山』の解説もし、桂吉朝に入門後、桂米朝の家に住みこみで修業していたころの芸者にまつわるエピソードなども明かした。本編では、春爛漫の京都・愛宕山の風情をたっぷり詰め込み、旦那や太鼓持ち、芸者たちなど登場人物を巧みに活写。にぎやかで華のある高座で盛り上げた。

続いては春風亭一之輔が『青菜』を口演した。真夏のひと時を描いた『青菜』、一之輔のさっぱりした口調が暑さを吹き飛ばすようだ。優雅でずっしりとした存在感のある旦那に、やや品性が欠けるものの愛嬌たっぷりの植木屋、歯に衣着せぬ物言いで気風の良い植木屋の妻など、キャラクターを際立たせ、真夏の江戸の情景をシアタードラマシティに浮かび上がらせた。

最後は春蝶で『浜野矩随』。事前の取材で春蝶は「(この噺には)自分がかつて二世として情けないと思ってきたことをオールインしてみた。そうすることによって、自分なりの『浜野矩随』になっていくのかなと思う」と話していたように、セリフの一つひとつに気を込める。亡くなった父を超えられない息子が苦悩を独白する場面では、子を思う母を切々と演じ、ぐっと引き込む。一方で、「私がこれをやりたいだけ」と好きな映画のオマージュも取り入れ、場を緩める。最後は、「母親の愛は深いものだと今は分かるような気がする。この一席だけはちょうどひと月前に亡くなった母に捧げたい」と締めくくった春蝶。大きな拍手に包まれて、幕を閉じた。

第二回となる2023年は4月28日(金)、大阪市中央公会堂 大集会室にて。夜の部(18:00開演)が完売につき、追加公演として昼の部(13:45開演)の開催が決定した。さらに、昼の部の演目はそれぞれ、春蝶『二階ぞめき』、吉弥『親子酒』、一之輔『子別れ』に決定。夜の部は昼の部とは違う演目になるそうで、後日発表されるのでお楽しみに。

追加公演のチケットは先行(抽選)受付中。

取材・文/岩本