撮影:黒豆直樹

新国立劇場の2023/2024シーズンのラインアップ記者会見が3月7日(火)に開催された。コロナ禍による収入減、そしてウクライナ紛争による物価高、エネルギー価格の高騰を踏まえ、一部の演目の延期、入場料の改訂が明らかになった。

舞踊部門に関しても、当初、考えていた「ニューイヤー・バレエ」の新制作を延期することになり、新作はゼロとなった。吉田都芸術監督は「立て直しのシーズンになる」と外的要因による苦しい現状を吐露しつつも「バレエ団は非常に充実しています」と強調。「歴代の芸術監督への感謝を込めてオマージュのシーズンとしました」と明かした。

新シーズンのオープニングを飾るのは、新国立劇場初代芸術監督である島田廣が強い思い入れを持って上演し、吉田芸術監督も初演時にゲスト主演をしたという『ドン・キホーテ』。

続く「DANCE to the Future:Young NBJ GALA」は、若手ダンサーにスポットライトを当てたガラ公演となっており吉田芸術監督は「若手ダンサーたちは主役を踊る機会がなかなかないですが、未来のスターを育てたいと思っていますし、このチャンスを活かしてほしい」と若き才能への期待を口にする。

年末から年始にかけては「くるみ割り人形」を上演。先述のように「ニューイヤー・バレエ」がなくなった分、ダンサーたちの身体的な負担が軽減される一方で、公演数自体は増やしている。

続く「ホフマン物語」は、前芸術監督の大原永子が女性のメインロールを全て踊ったことがあるという演目であり、吉田芸術監督は「大原先生にまた来日していただいて、ダンサーたちに喝を入れていただけたら」と大原に指導を依頼する考えを明かした。

さらに4月から5月にかけて上演の「ラ・バヤデール」は、2021年に亡くなった元芸術監督の牧阿佐美が2000年に新国立劇場で改訂振付第1作として新制作された作品であり、吉田芸術監督は「古典バレエの様式美を堪能できる作品」と語る。

6月にはデヴィッド・ピントレー元芸術監督が新国立劇場のために振り付けたオリジナル作品『アラジン』を再演するが、吉田芸術監督は「振付家により直接の指導は、ダンサーたちの成長につながり刺激になる」とピントレー氏の来日を熱望した。

また森山開次が子どもから大人まで楽しめるプログラムとして制作した「NINJA」を中劇場用にスケールアップさせた「新版・NINJA」の再演も行なわれるほか、エデュケーショナル・プログラムとして「白鳥の湖」が上演される。

取材・文:黒豆直樹