撮影:荒川潤

3年半前に多くの反響を得た、日米クリエイターによるオリジナルミュージカル『FACTORY GIRLS ~私が描く物語~』が2023年6月に再演される。19世紀半ばのアメリカで、女性の権利を求めて戦った実在の女性サラとハリエットをモデルに、工場(ファクトリー)で働く女性たちの姿を描く今作は、性別にかかわらず多くの人の心を動かした。2019年読売演劇大賞優秀作品賞受賞作である。

サラ役の柚希礼音は「女性だけに突き刺さる作品かなと思いきや、男性の方々にもとても刺さったと聞いて、ものすごく嬉しかった。中学校や高校の友達など同世代の人もこの作品が好きだと再演を喜んでくれ、3年半経っても待ち望んでくださる方がこんなにいるんだとウキウキしています」と声を弾ませる。

初演の稽古時より「素晴らしい作品になるんじゃないかと手応えを感じていた」という柚希。恋愛ものが多い日本のミュージカルの中で、女性の労働と自立がメインとなる作品がどこまで受け入れるだろうという不安はすぐに無くなった。「皆が白熱してきて、稽古場の熱気がすごかった。宝塚の稽古場のようでした。こんなに自主稽古をするのかというほど、皆で何度も何度も稽古をして意見を出し合って、とても団結していました。再演ではまた新たなメンバーが加わるので、どうなるのか楽しみです」。

サラは「たくさん、みんなに支えられて、立ち上がっていく。とても人間的で大好きなキャラクターだった」と柚希の思い入れは強い。脚本・歌詞・演出の板垣恭一からは「あなたは周りに汗をかかせて真ん中にいるリーダーじゃなくて、自分の心と体も汗だくになって表現するリーダーだから、それに感動した」と公演期間中に言われ、とても喜んだという。

本作は、楽曲の力強さも大きな魅力だ。柚希は「譜面はすごく難しい。どうなってるの?このリズムとなってしまうほど。でもそのリズムをしっかり取ることによって表現されるものがある。初演時は振り付け、衣裳、歌、全てを必死にやりましたが、今思えば「あの工場のダンスはもうちょっとこうに踊れたんじゃないか」とか「登場のシーンはもっとこうできたんじゃないか」と客観的に見ることができているので、3年半の間に変化した自分でまた新たに臨めるのが楽しみです。あの時とは時代も変わったので、多くの方により届くようにまた0から作り上げていきたい。そして、初演よりも断然良くなっていることを目指したい」と再演に挑む。

文・取材 河野桃子