撮影:松竹

1873年に明治座の前身である芝居小屋が創建されてから150年。これを記念して、明治座創業百五十周年記念『壽祝桜四月大歌舞伎』が上演される。2月27日(月)に行われた合同取材会には、出演の中村梅玉、中村又五郎、中村芝翫、片岡孝太郎、松本幸四郎、片岡愛之助が登壇。招待されたファン30名も参加し、和やかなムードで行われた。

まずは、『大杯觴酒戦強者(おおさかづきしゅせんのつわもの)』で酒豪の井伊直孝、『お祭り』では鳶頭梅吉を勤める梅玉。「『大杯~』は河竹黙阿弥が当時明治座の座元だった初代市川左團次さんのために書いたもの。“黙阿弥の世話物”とはまた違う感じが面白く、役者のニンで見せる演目です。『お祭り』では、お祝い気分を振りにも込めてお見せできれば」と語る。

『絵本合法衢』で高橋弥十郎を勤める又五郎は、「幸四郎さんの演じる左枝大学之助/太平次(2役)は本当に悪い人。でも私はいい人(の役)です」と真顔で話し出し、ファンと取材陣から思わず笑いが。内容については「勧善懲悪ではありますが、“悪”だけでなく“善”の人間の性(さが)も描かれているのが魅力」と話した。

孝太郎も「私は太平次の彼女になりそこねて殺されるお松と、いい人側の弥十郎妻皐月、両極端の役を」と茶目っ気たっぷりに挨拶。「初体験のお役で、玉三郎さんにもお稽古をつけていただきました。この作品は父(片岡仁左衛門)が何度かやっていますが、今回は幸四郎さん版ということで楽しみです」と微笑んだ。

芝翫は、『大杯~』で原才助、『絵本~』で高橋瀬左衛門。「『大杯~』は24年ぶりの上演。色々と画期的なことをなさった初代左團次さんへの作品なので、リアルさもあれば世話物、義太夫も入って、歌舞伎の醍醐味が凝縮されています」と紹介。また「『絵本~』の幸四郎さんは悪い人役ということで、これは気持ちよく(終演後の食事も)誘ってもらえるのでは」と隣の幸四郎をチラリ。

幸四郎は苦笑しつつ「どうも、悪い人です」と挨拶、会場中に笑いが起きる。その後は表情を引き締め「左枝大学之助/太平次は、祖父と父も勤めたお役。当時の台本の書き込みを見ながら作り上げたい」と意気込んだ。『大杯~』では内藤紀伊守で「歌舞伎の多彩なジャンルが詰まった4月興行。ぜひ色とりどりの舞台を楽しんでください」とアピールした。

最後に愛之助が「名作『義経千本桜 鳥居前』の佐藤忠信実は源九郎狐を、初役ですので芝翫さんに教わって勤めさせていただきます」と挨拶。「今回は明治座百五十周年ということで、立ち回りもいつもとは変わったものにしたいと思っています」と笑顔で語った。

取材会では明治座での思い出も語られ、梅玉が「あれは初舞台の頃だから…60年以上前?」と明治座との長いお付き合いに改めて驚くひと幕も。芝翫の「舞台と客席が一体となった、春らしい心晴れるような興行にしたい」との言葉に、ますます期待が膨らむ取材会となった。


取材・文/藤野さくら