19世紀初頭、生後間もなく16年間、地下の牢獄に閉じ込められていた孤児、カスパー・ハウザー。世間から隔離され、育てられた少年は突然、文明社会の中に投げ込まれ、社会に適応するよう言葉と音を拷問のように浴びせられる。そして数年後に謎の死を遂げる。

「カスパー」 チケット情報

実在したこの人物を、1968年にノーベル文学賞受賞作家のペーター・ハントケが戯曲化。寺山修司が『ゴドーを待ちながら』と並んで、「20世紀に書かれた最も重要な作品」と評したことでも知られている。

この春、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の公暁役で注目を集めた寛一郎を主演に迎え、上演される。本作への意気込みなどを聞いた。

脚本を読み、一冊の本を読んだ感覚だった。「読み物としてすごく興味深かった。掘れば掘れほど深く考えることができる題材で。自分と言葉、自分と世界が全てニアリーイコールだと。それは自分が今、一番知りたいことでもありました。この作品は根幹的なことを描いているので、カスパーという概念が存在するんじゃないのかなという解釈のもと、稽古をやってます。(今は稽古開始から)2週間経ってやっと全体像が見えてきた段階でして、非常に共鳴できる部分があると感じています。僕にもあった気持ちをカスパーが代弁してくれるところもあるので、そこを自分と照らし合わせながら、一つひとつ自分自身を反芻していくという意味も込めて演じられればと思ってます」。

舞台出演は、本作が最初で最後と決めている。これまで舞台にはさほど興味もなかったが、『カスパー』が舞台でしかできない作品だと気づき、自分にとって舞台出演の価値を見出せたという。「僕にとっての“舞台”は『カスパー』。だから、『カスパー』が終われば、僕の舞台も終わります。本当に、最初で最後の作品が、これでよかったと思える舞台です。今後、役者をやっていく上で何がどう変わるのか、今は具体的に提示できないんですけど、でも確実に影響を及ぼしてくれる作品です」。

祖父は三國連太郎、父は佐藤浩市。寛一郎の舞台出演について佐藤の反応を尋ねると、こう続けた。「“お前、舞台やんのか”(の一言)で終わりました(笑)。三國は1回、親父は1回も舞台をやっていないので、客観的な印象としてあんま舞台をやらない家系みたいなのもありますし、僕ら家族もそう思ってました。そういった中でやるので、びっくりが大きいですよね。家庭の中では、ざわっとしました(笑)」。

公演は、3月19日(日)から31日(金)まで東京芸術劇場シアターイースト、4月9日(日)大阪・松下IMPホールにて。チケットは発売中。

取材・文:岩本

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます