ダニエル・キイスの傑作小説『アルジャーノンに花束を』。日本ミュージカル版は2005年に初演、その演技に対し「第31回菊田一夫演劇賞」を主演の浦井健治が受賞。さらに、2014年に再演の際も浦井は「第22回読売演劇大賞最優秀男優賞」を受賞し、浦井の代表作となった。今回の5演目で、3回目のチャーリイ役となる。
――出演が決まった時のお気持ちは?
浦井 こんなに長い間ひとつの役を演じられるなんて役者冥利に尽きますね。このうえなく幸せな思いで、やらせていただきたいと思います。
――以前の公演で印象に残ったことを教えてください。
浦井 (初演・再演のアリス・キニアン役)安寿ミラさんが、再演の時に「これをライフワークにしたらいい。それくらい、あなたに合ってる」って言ってくださったことがすごく嬉しかったですね。
――すごいほめ言葉ですね。
浦井 チャーリイの少年性や狂気、内向的からくる爆発、イノセント…などがうまくはまっていたのか、更には、この作品で学んだことでもあるのですが、1曲の中で心情や情景に合わせて音色を変えていったり、役者が表現を追求する場として、ライフワークに勧めてくださったのかなと。
――再演で、そこまでの域に達したのですね。
浦井 再演のとき、最後の通し稽古を終えた後、(演出の)荻田浩一さんと制作の方が「僕たちの完成形だね」って。結果、お客様にとても愛される作品になりましたし、ずっと、僕の中にはチャーリイの体感が残っていましたね。
――「体感」ですか。
浦井 楽曲を聞けば、景色、心情、相手の顔、全部浮かびます。森新吾(2006年・2014年アルジャーノン役、2019年逝去)のことも…。
――作品そのものについて、どんな魅力を感じますか。
浦井 先日初演・再演の映像を今回演出する上島さんと一緒に見て、家族のストーリーであり、チャーリイの周りにいる人たちの群像劇であり、同時に社会をあぶりだす鋭い問題提起でもあると感じました。言葉ひとつとっても、大切にしたいこと・伝えたいことが以前とは変わってきそうです。
――今回は、森さんが所属していた「DIAMOND☆DOGS」の東山義久さんが出演されますね。
浦井 義くん(東山)が新吾への思いも込めて、ストラウス博士やパン屋の工場長、チャーリイの父親を演じます。彼のダンスの妖艶な色気と切れ味はもちろん、お芝居の熱さや人情味あふれる素顔が、僕は大好き。エンターテイメント性と演劇性の両面で作品の核になるでしょう。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
浦井 皆で新しく創る、2023年バージョンの『アルジャーノンに花束を』です。初演以来、これまでの全てに敬意を表して創りたい。東京公演を行う日本青年館は立地的にも来やすい劇場ですし、ぜひお越しいただけたらと思います。
東京公演は4/27(木)~5/7(日)まで、大阪公演は5/13(土)・14(日)にて開催。
取材・文:金井まゆみ