舞台『火の顔/アンティゴネ』が東京・吉祥寺シアターにて上演されている。
2021年には「深作組ドイツ三部作」と銘打ち、『火の顔』を始めとするドイツ戯曲を3作品(『火の顔』『ブリキの太鼓』『ドン・カルロス』)、22年には「深作組新ドイツ三部作」の第一弾として、日本では80年ぶりの上演となる『オルレアンの少女-ジャンヌ・ダルク-』を上演した深作健太による演出のもと、ドイツの家族劇2作品を同時上演するという企画。
1つは、ドイツ演劇界の新進気鋭の劇作家であるマリウス・フォン・マイエンブルクが現代の不条理を描いた『火の顔』で、ジャニーズJr.の人気グループ・少年忍者の川崎星輝主演で上演。もう一つは、戦後ドイツを代表する劇作家ベルトルト・ブレヒトが、ソフォクレスのギリシャ悲劇を今日的な意味を加えて改作した『アンティゴネ』で、NHK朝の連続テレビ小説『舞い上がれ!』のヒロインの同僚・山田紗江役でも話題の大浦千佳主演で上演する。
初日を前に行われた『火の顔』のゲネプロ(総通し舞台稽古)を観た。
登場するのは、確かにどこにでもいそうな“普通”の4人家族だが、物語の序盤からどこか歪でぎこちなさが感じられる家族である。父親(宮地大介)と母親(愛原実花)に反発を強めていく、思春期真っ只中の姉・オルガ(大浦千佳/小林風花※Wキャスト)と弟・クルト(川崎星輝)。そこへ突然、現れる姉の恋人パウル(富田健太郎/葉山昴※Wキャスト)。閉ざされた家庭に、新しい〈風〉が吹き込んだとき、思春期の少年に渦巻いていた〈炎〉は、音を立てて燃えあがるーーというあらすじである。
前回2021年の上演のときは、北川拓実が主演でその好演ぶりが話題となったが、今回バトンを受け継いだ川崎星輝も非常に魅惑的。初日を前に「ドイツ戯曲とは何か、という所から始まった稽古期間。戦争、文化、少し刺激しただけで爆発してしまうほど、繊細な家族を考え続けた1ヶ月でした。何故僕たちは今、暴力に関する演劇を上演するのか、この舞台を通してぜひ皆様と一緒に考えたいです。僕の新しい一面、これからの可能性を見て頂けるよう全力で挑みます!」とフレッシュなコメントをしている弱冠18歳だが、その若さと危うさと狂気と色気が混じり合う“不安定な感じ”がクルトそのもの。なかなか難しい役柄を堂々と演じ切ったと思う。
時代も国境も超えた2つの家族劇を、同じキャスト、同じセットで上演するという。そこから何が見え、何を感じるのか。ぜひ2作を見比べてみたい。公演は4月16日(日)まで。
※川崎星輝の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記です。
取材・文:五月女菜穂







