スポーツ観戦のために外へ出るのも億劫な2011年末。そもそも今年はワールドカップも夏冬オリンピックも開催されず、プロ野球やJリーグは現在シーズンオフ。箱根駅伝までのつなぎに、今回はコタツの中でも楽しめるスポーツ漫画……しかも普段あまり接する機会のない“マイナー系”を紹介していきたい。


【その1】
インド発祥の謎スポーツ『カバディ7』(作:小野寺浩二)
 

日印ハーフとして生まれ、日本男児に憧れる熱血漢の主人公。転校先の高校で日本人の堕落ぶりに失望したところを怪しい女子マネージャーに誘われ、気がつくと「カバディ部」で全国大会を目指すことになっていた……。 

オーソドックスな設定だが、日本の漫画でカバディを主題にしたのはおそらく史上初。何より斬新なのは「競技人口が少なすぎて参加費を払うだけで全国大会に行ける」ことだろう。最新コミックス(2巻)のおまけ漫画によると、これはどうも実話らしい。

作風自体はギャグまじりの熱血スポ根もので、キャラクターも十分個性的。特訓だとか試合中にケガで欠場といったお約束要素もてんこもり。また、カバディのルールや制度を詳しく取材しているようで勉強になる。「カバディ、カバディ」と連呼しながら敵陣の相手にタッチ、あとは捕獲されないよう全力で自陣に戻るという一見地味なスポーツなのだが、意外に戦術も多彩で驚かされること請け合いだ。メディアファクトリー 620円 
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【その2】
超人たちの熱い祭典『デカスロン』
(作:山田芳裕)
 

豪腕ピッチャーなのにノーコンすぎて夢破れた青年が、恩師の勧めで陸上十種競技「デカスロン」に参戦。未知なるライバルたちとの死闘を繰り広げながら世界の頂点を目指す本格アスリート漫画だ。ちなみに作者の山田氏は今年HNKでアニメ化された『へうげもの』原作者でもある。

読んで初めて知ったのだがこのデカスロンという競技、生半可なスポーツではない。100走にはじまり、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400m走、110mハードル、円盤投げ、棒高跳び、やり投げ、1500m走のまったく異なるスポーツを2日間にわたり「たった1人で」やり遂げる競技なのだ。超一流デカスリートになると、一種目の記録がその専門アスリートに匹敵したりもするらしい。まさに彼らこそ現代の“超人”だろう。

 
漫画なので主人公のポテンシャルが異常に高いのはお約束だが、真剣勝負の最中にもドジをかます天然ぶりがおもしろく、活躍ぶりに嫌みがないため純粋に楽しめる。国内外のライバルにも魅力があり、特訓シーンは実際のトレーニング理論を取り入れた本格派、さらに作者独特の躍動感ある絵柄とあいまって全23巻(文庫版では全13巻)の長さをまったく感じないまま読破できる。読み応えのあるスポーツ漫画を探している人には迷わずイチオシだ。
小学館 670円
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【その3】
日本の伝統芸能? 『どげせん』(作:板垣恵介&RIN)

世にも珍しい、これまた史上初であろう「土下座」がテーマの作品。ジャンル不明(分類できない)の漫画だが、立ち向かう相手がヤンキーにヤクザ、飲食店の頑固店主など強豪揃い、しかも毎回の勝敗がハッキリしているため便宜上エクストリームスポーツの一種として扱わせてもらった。

主人公は小柄な中年の高校教師。なぜか災難に遭遇しやすい彼は、すべてのトラブルを土下座だけで解決できる特技を持っている。ほとんど出オチのような設定だが、毎回のように主人公の繰り出す「土下座バリエーション」の数々がすさまじい。階段を転がり落ちながらの土下座、全裸土下座、顔面の筋肉だけで土下座、変装土下座などなど……。シチュエーションや相手によって土下座を巧みに使い分け、危機を脱したり相手に自分の要求を呑ませていく。読んでいくうちに読者は悟るはずだ。「土下座って強え~!」と。 

原案を考えたのは『グラップラー刃牙』シリーズでおなじみの板垣恵介氏。どんなに無茶な状況でも勢いで納得させてしまう、ハッタリの効かせ具合はパーフェクトである。ハマる人はハマるので、機会があればぜひ1巻だけでも読んでみてほしい。 
日本文芸社 620円
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……以上、冬の寒さにも負けないエネルギーを秘めた3作品を紹介してみた。長年語り尽くされてきたメジャースポーツ漫画とは違って、マイナースポーツ漫画は競技ルールが明かされただけで新鮮な驚きが感じられる。こうした漫画を読んでみて、興味を持ったら実際に体験してみるのも良いだろう。
…… 土下座以外を。 

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。