「日本舞踊の伝統をつなぎながら、“いま”こそ輝き、そして“未来”へと光を放つ公演でありたい」との願いを込め、(公社)日本舞踊協会が主催・制作し毎年新作を上演している「日本舞踊未来座=SAI=」。期待の若手から名だたる舞踊家が参加してきたこのシリーズに、今年は紫派藤間流三代目家元の藤間紫が登場。紫は、ドラマや映画、舞台にも俳優の藤間爽子として出演、注目されている。構成・演出の西川扇与一、制作・出演の花柳基、紫に話を聞いた。
タイトルは『舞姫』。日本舞踊に登場する様々な時代の“舞姫”を描きながら古来から未来へと続く日本舞踊それ自体も表現してゆく。
「日本女性の美しさやしなやかさ、たおやかさ、力強さ……そんな凛とした姿を舞台で見られるのが日本舞踊の魅力」と扇与一。「本作では舞踊家の方たちにアメノウズメやかぐや、静、阿国等の舞姫に扮して踊っていただくほか、“お座敷での舞姫”である芸妓の場面では人間国宝の井上八千代さんに京舞のご指導をお願いした豪華版です。CM音楽を多く手掛ける麻吉文さんの、邦楽と融合した楽曲も楽しんでいただければ」と意気込む。
冒頭には、紫演じる現代女性「マイ」がタイムスリップする場面を入れた。日本舞踊を余り観たことがない人でもすんなりと世界観になじめる仕掛けだ。「私も令和に生きる女性として、『日本舞踊って何だろう』『なぜ踊るんだろう』というのはいつも自問自答していて」という紫。「でも、以前この『未来座』に出演した時、皆で新作を創る過程を通して、改めて“踊るって楽しい!”と思えたんですよ。今回は普段の自分に近い役ですし、“なぜ踊るのか”の答えがひとつ見つかるような気がしています」と微笑んだ。
また基は「例えば外国の方が『日本の綺麗なものが観たい』と観にいらしても、目と耳でパッと楽しめる作品。“ダンス”は世界共通ですし、プロである日本舞踊家が多彩な着物を纏って踊る姿は美しいもの。ぜひインバウンドの方も気軽にいらしてください」とアピールした。最後に「三代目藤間紫」の魅力について扇与一と基に聞くと「2019年の未来座公演で紫さんと一緒に携わった時、初代の紫さん(三代目の祖母)が持っていらした舞踊家であり役者でもあるという魅力を、やっぱりこの人も受け継いでいるんだなあと感じて」(扇与一)、「とにかく踊りが好きというのが伝わってきます。踊りの楽しさが舞台に溢れているのが紫さんの魅力です。」(基)との言葉が。紫は照れながらも「先輩方が受け継がれてきたものをしっかり汲み取りたい。『これまでで一番いい作品にする!』という気持ちで挑ませていただこうと思います」とキッパリ。両先輩の熱意に応える紫の表情に、キャストとスタッフが一丸となって創り出す初日の舞台への期待が増した。
取材・文:藤野さくら