KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『虹む街の果て』(作・演出:タニノクロウ)が5/13(土)から同劇場で上演される。
2000年に庭劇団ペニノを旗揚げ以降全作品の脚本と演出を手掛け、海外招聘公演も多く世界的な評価も高いタニノクロウが、2021年に書き下ろした『虹む街』。初演では公演会場に横浜の野毛がモデルの飲食店街の一角をリアルに再現。実力派俳優、そして神奈川県民を中心とした多様な国籍の方々とともにさまざまな人生の思いが交差する多国籍な街の風景を作り上げた。コロナ禍を逆手に取りほとんど台詞を発しない寡黙劇に仕立てあげたことでも話題を呼んだ。
今回は『虹む街』の“続編”で、10年、20年...さらに100年...という壮大な月日が経った街や人々を描く。タニノは「前回のリメイクではありますが、はっきり言って全くの新作になっています。とにかくいろいろな“果て”をイメージして作りました。初演をご覧になっていてもなっていなくても、子どもも大人も楽しんでもらえると思います」。
タニノの作品といえば緻密な舞台美術が見どころ。「多分僕はいろいろなものに体温を感じて付き合いたいんだと思います。それは俳優さんだけではなく、照明や音響や小道具に対しても。そして、その中に舞台美術があると思うんです」とタニノ。「舞台美術を生き物のように捉えているんです。特にうちのカンパニーで作品を作ると、最長5年ぐらい国内外いろいろな場所を巡るのでずっとセットと付き合う。ものすごく重要なパートナーだと思っています。また、人間が年をとっていくように舞台美術も年をとっていくんですけど、色が飛んだり木がきしんだり、年をとったなりのいい味が出てきて、演技をするようになる。そういうところも含めて異常なぐらい“舞台美術愛”があるんです」。今回は「壮大な月日の経過を経た街」という設定から世界遺産の熊野古道をイメージしたと言い、前回の『虹む街』のリアルなセットを「緑化/苔化した」。そのペインティングをイベント化したところ未就学児も含め約200人が参加。皆で壁や床、小道具などを塗装したそうで、タニノも「妙な統一感のある素晴らしい仕上がりになって、びっくりしました」と話す。また、本番前の開場時間に舞台美術を自由に歩き回れる試みを毎公演実施する予定だ。なかなかできない体験なので、思い切り世界観を楽しんでみよう。
公演は5/21(日)まで。
取材・文:五月女菜穂







