モーツァルトと組み、『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』などの名作オペラを生み出した台本作家のロレンツォ・ダ・ポンテ。ダ・ポンテとモーツァルトとの出会いや別れ、その軌跡を描くオリジナルの音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』が初演を迎える。ダ・ポンテ役の海宝直人に話を聞いた。
音楽劇『ダ・ポンテ ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』 チケット情報
「音楽に詳しくない人でも曲は聞いたことがあるぐらいモーツァルトは有名なのに、ダ・ポンテは意外に皆、名前を知らない。彼について調べていくうちに、濃い人生を送った人だと知りました」と語る海宝。1782年のウィーンで、女好きで詐欺師のダ・ポンテは、その才覚と計算高さで宮廷劇場詩人の座までのぼり詰める。しかし、作曲家サリエリにオペラの処女作を酷評され、行き場を失う中、モーツァルト(平間壮一)と出会い意気投合する。「ダ・ポンテはとにかく名声や評価がほしくて、いろんな手段を使って這い上がろうとする。でも、あともう少しというところでタイミングを逃して、一向にうまくいかない。名声がないまま80歳を過ぎても諦めないで学校やホールを作り、自分の思いに貪欲に生きた。なかなかできない生き方ですし、そのアンバランスさとバイタリティに魅力を感じます」。
自身との共通点は、好きなことを一途に追い続けるところだと言う。「僕も音楽やミュージカルが好きだから。こういう仕事は自分の思い通りにならなかったり、表現がつかめなかったりと、苦しみは分かるんです。モーツァルトに出会い、お互い刺激し合いながら、有名なオペラを作れたのは幸運ですよね」。
7歳で子役としてデビュー後、『ライオンキング』の初代ヤングシンバ役に抜擢された。以来、伸びやかな歌唱力と表現力で様々な役を演じ、ロンドンでも舞台デビューを果たしている。最近では難解で有名な作曲家スティーヴン・ソンドハイムのミュージカル『太平洋序曲』に出演、その安定した歌声で観客を魅了した。海宝に歌えないジャンルはあるのだろうか?「何でも歌えるように頑張っていますけど、日本語で歌っていないのはラップですね。ロンドンではやったんですけど。うまくできたかというと、それは分かりません(笑)。ラップのミュージカルも増えているからチャレンジしたいなと思います」と意欲的だ。
今作でもダ・ポンテにどんな光をあててくれるのか楽しみだ。「不遇な人だと思われがちですけど、素晴らしい瞬間もある。いろんなことがあるけれど、人生って生きるに値すると人間賛歌になる作品です。ぜひ、観に来てください!」。
6月21日(水)から25日(日)まで東京・シアター1010にてプレビュー公演、7月9日(日)から16日(日)まで東京建物ブリリアホール、6月30日(金)・7月1日(土)愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、7月20日(木)から24日(月)まで大阪・新歌舞伎座にて。
取材・文:米満ゆう子