撮影:サギサカユウマ

時雨沢恵一による大人気小説「キノの旅」。昨年、初の舞台版が上演され話題を呼んだが、その待望の続編となる「キノの旅Ⅱ - the Beautiful World-」が6月15日(木)より上演される。前作に続いて主人公のキノを演じる櫻井圭登、キノの相棒であるモトラド(二輪車)のエルメスに扮する辻凌志朗が本作への思いを語ってくれた。

昨年、舞台版の制作が発表された当初、原作では“女性”であるキノを男性の櫻井が演じること、話をすることができる二輪車のエルメスを生身の役者(辻)が演じることなどについて、制作前から否定的な声もあった。櫻井は「長年、愛されてきた作品だからこそ、そういう声があるのは当然」とファンの心情を受け止めつつ、ただならぬプレッシャーを感じながら稽古に臨んでいたと明かす。「それでも、稽古をする中で、支えてくださるカンパニーのみなさんを信じて舞台『キノの旅』をつくってきたという思いはあったし、初日を迎える頃には自分がキノだという実感を持って板の上に立てていました。初日を終えて、お客さまから『キノがキノだった』という嬉しいメッセージをいただいて、やってきたことが間違ってなかったと思えたし、改めて演劇の面白さを実感させてもらった作品になりました」。

“相棒”の辻は「演じる役が難しければ難しいほどヒリヒリとして燃えてくる(笑)」という言葉通り、強い思いを持ってこの作品に挑んだ。
「最初は独りよがりに『どうやろうか?』と考えていたんですが、ふと横を見ると、圭登くんをはじめ、信頼の置ける仲間たちがいました。良い意味で責任から解放されて、自由にやらせてもらえたし、やってみて、演劇だからこそ伝えられたものがあったと感じました」。

キノたちは様々な国を訪れるが、国ごとに文化も慣習も価値観も全く異なり、人々とのやり取りを通じて、愚かさや醜さも含め、人間の姿が描き出されていく。今回の続編でも、現代社会を暗示するような物語が展開する。

本作の魅力について櫻井が「正解がない中で、ひとりひとりに何かを考えさせてくれる」と言えば、辻は「どんなに機器が進歩して生活が便利になっても、実は人間の本質は変わらないんじゃないか? ということを教えてくれる」と頷く。

今回の続編で楽しみにしていることは?そう尋ねると櫻井は「今回、キノが笑うシーンがあるんです。そういえば、初演でキノとして笑ったことがなかったなと思って、舞台上でどんな感情になるのか? 今から楽しみです」と明かしてくれた。

新しい旅路を通じて、観客にどんな感情を届けてくれるのか? 公演を楽しみに待ちたい。

取材・文:黒豆直樹