『フィガロの結婚』などの名作オペラを生み出した、詩人のロレンツォ・ダ・ポンテと作曲家のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。若き天才ふたりの創作を巡る絆と葛藤を描き出す、音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』が、6月のプレビュー公演を経て、愛知、東京、大阪で上演される。その開幕を前に、有観客による歌唱披露イベントが開催。キャストの海宝直人、平間壮一、相葉裕樹、井上小百合が登壇した。
まず披露されたのは、ダ・ポンテ役の海宝が歌う「この静かな夜に」。こちらは本作のテーマ曲でもあり、海宝の透明感のある、伸びやかな声が胸を打つバラードだ。さらに平間によるモーツァルトの決意を表明するナンバー「僕が拍手するんだ」。アントニオ・サリエリ役の相葉による、祖国イタリアのオペラの素晴らしさを高らかに歌い上げる「ヴィヴァ、イタリア!」。ダ・ポンテの恋人フェラレーゼ役の井上が、自身の生き方を力強く歌う「街角の女の子」。そしてデュエットナンバー「最高の相棒」では、海宝と平間が息の合った美しいメロディで、最高の相棒に出会えたふたりの喜びを生き生きと表現してみせた。
続いては、観客からの質問にキャストが答えるトークコーナーへ。ここで一気に主役に躍り出たのが、サリエリ役の相葉だ。「ダークなイメージのあるサリエリを演じる上で意識することは?」という質問に、「正直ダークなイメージはなく、わりと愚直に、音楽に熱い、真っ直ぐな男だと思います」と答えると、「確かに“ヴィヴァ!”なイメージがね」と海宝は言いつつ、直角に曲げた右手を掲げ、相葉の歌唱時のポーズを真似る。するとその瞬間、平間と井上もニヤリ。「この曲をやると、稽古場のみんながニヤニヤするんですよ~」と相葉は苦笑いだったが、結果的にカンパニーの仲の良さを伺わせる一幕に。そしてそれは、「この配役でしか作れない作品になっていると思います」という井上の言葉を裏づけるものにもなった。
「本作のイチ押しポイントは?」という質問にも、海宝と平間がサッとサリエリポーズを取った瞬間、会場に笑いが。相葉にツッコまれつつ、「それぞれのキャラクターがとてもドラマチックな人生を送っているので、そのドラマを楽しんで欲しいです」と海宝。平間も「メインテーマとなるのはやっぱり人間模様。そこを細かく見てもらえると、より作品を楽しめるんじゃないかと思います」とアピールした。
取材・文:野上瑠美子