玉梨ネコの「リタイヤした人形師のMMO機巧叙事詩」(TOブックス刊)を原作に、火事で腕を使えなくなった人形師・いろはがVRゲームの世界で再び人形作りに挑んでいくさまを描く舞台「DOLL」が6月1日(木)より開幕。VR世界で最強のプレイヤーとして君臨するディアベルを演じる藤田玲が本作への思いを語ってくれた。

もともと「ゲームが大好き」という藤田にとって、現実世界とゲームの世界が交錯する物語は「すごく好きな世界観で親しみを感じるものだった」と語る。脚本の小林雄次は、藤田が10代から関わってきた「牙狼<GARO>」シリーズの初期の脚本に携わっており「ご一緒するのはそれ以来なので嬉しかったです。ドールが戦うシーンで必殺技が出てくるところは小林さんらしいなと感じました」と嬉しそうに語る。

ちなみに演出の元吉庸泰とも“浅からぬ”縁があるそうで…。
「演出家として関わるのは初めてなんですけど以前、出演したミュージカルで演出の板垣恭一さんの助手として元吉さんが入っていて、すごく助けていただいたんですね。それもあって『元吉さんと一緒にやりたい』と今回のお話も受けさせていただきました。元吉さんはすごくよくしゃべります(笑)。演技に対するディレクションでいろんな例えが出てくるんですけど、その例えが長い(笑)! しかもだんだん脱線する(苦笑)。でもそれが素敵です。今回の舞台も、アンサンブルのみなさんと額縁を使って、バーチャルな世界を抽象的に見せる、アート性の高い演出をされていてすごく面白いです」

いろはは現実とVR世界のはざまで、時に葛藤しながら成長していくが、演劇の世界はまさに“生身”の世界。肉体を駆使して表現するところが醍醐味と言える。
「最近では、遠方の方もオンラインで演劇を楽しんでもらえたり、応援上映で盛り上がったり楽しみ方が増えたのは良いことだし、話題のChat GPTだって役作りで活用できるかもしれない。そういう新しい便利なツールをうまく活かしていくのは良いことだと思います。一方で、“生”の空気だから感じられるものが確実にあると思います」と言葉に力を込める。

本作は“選択”の物語でもあるという。
「元吉さんの言葉なんですけど、僕らはいつもいくつか選択肢を持っていて、どういう選択をするかでどう進んでいくかが変わっていく。この作品はみなさんにとっても自分の選択について考える機会になるんじゃないかと思います」。

ちなみに藤田が何かを選択する時に大事にしていることは何かを聞くと、「直感ですね(笑)」と答えた。
東京公演は6月5日(月)まで渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて。

取材・文:黒豆直樹

【公演情報】
舞台『DOLL』
脚本:小林雄次 演出:元吉庸泰
チケット:一般発売中(全席指定9,800円)