年末年始以外は毎日開いている、電機街のお母さん的存在「シンコー電機」
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相模電子で思わず、筆者が前から欲しかったサブウーファーを購入した後、最後となるシンコー電機に向かった。
年末年始をのぞいて年中無休。年に360日営業しているというシンコー電機。店主の渡辺さんにお話を聞いた。
シンコー電機は、南区に電機店を開業していたが、エジソンプラザができるということで移転してきた。検察庁で働いていたご主人の機械好きが高じ、仕事を辞めて電機店を始めたというから、相当の機械好きだったことは想像に難くない。
6年前にご主人が他界されてからは1人でお店を続けている渡辺さん。「毎日お店に出るのが楽しくて、用事があっても午後には戻ってきて店を開けちゃう」というからいつ来ても安心だ。
常連客とは型番だけで「ああ、それならこっち」とやりとりする。
すべてを把握しているプロフェッショナルでありながら「部品はわかるけど、何に使うのかはあんまり知らないの」と微笑むチャーミングな一面も。電機街のお母さんといった安心感もある。
ちなみに、来店していた常連の方で、第二次世界大戦前の真空管などのパーツを集め、自ら設計してアンプやスピーカーを作っているという最上級のマニアの方は「インターネットでここを知ったのは数ヶ月前だが、ここに来れば何でもそろし、掘り出し物も多い」という話だった。
そして、最新作の真空管アンプの写真を見せてもらっていると、「こんなのがあるわよ」と渡辺さんが探し出してきてくださったのは、何と「エジソンプラザ・ジャーナル」というエジソンプラザ発行の新聞だった。
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「100年前のオーディオ」というエジソンの紹介記事や、「エジ・プラを『エジ・ぶら』しよう」など小気味好い見出しが並んでいる。
「ビデオコーナーを新設」などの記事から、電子部品だけではなく、オーディオを中心とした家電、マイコン(マイクロ・コンピュータ)などの家電量販店、無線機の専門店もあったことがわかる。ビデオは15万円からというのもしびれる価格だが、ステレオラジカセが2万5000円より。
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「エジソンプラザ見てある記」にはアップル社の伝説のマイコン「Apple II」 も映っていたほか、最終面には3階の出店募集とJR石川町駅前再開発の記事もあった。
渡辺さん、貴重な資料をありがとうございました。
「お客さんは、やっぱり時間が自由に使えるようになった、年輩の方が多いわね。古いトランジスタを探して、千葉や埼玉からみえるお客さんもいるわよ」と話しているところに若い方が現れたので、声をかけてみた。音楽関係の仕事をしているという福島さんだ。
「日本のパーツであれば秋葉原に行かなくてもここに来れば古いものでもだいたいそろうし、あとはお母さんが元気でやってるか、それを見にね」という福島さんは月に1~2度、楽器や機材を修理するための部品を買いにくるそう。訪れたら、たいてい3店とも覗いていくのだという。
渡辺さんによると、タック電子販売は比較的新しい部品、シンコー電機は古い部品、相模電子はその両方とオーディオ関係、という特色がそれぞれあり、「この電機街に来れば、だいたいのものは手に入るんじゃないかしら」とのことだった。
取材を終えて
エジソンプラザ・ジャーナルを拡大してみた方はお気づきかもしれないが、このジャーナルが発行された当時、時代は完全にアマチュア無線ブーム、さらに1976(昭和51)年に発売されたNECのTK-80に代表されるマイコンブームだった。
記事のそこかしこに踊る、「ハム(アマチュア無線家のこと)」の文字に無線機やアマチュア無線技師養成課程講習会の広告などなど。1階に店舗を構えていた「トヨムラ」がハム専門店で、エジソンプラザ以外に名古屋から宇都宮まで約10店舗を経営していたほど、アマチュア無線は人気だったのである。
「オー(オーディオ)マイ(マイコン)ハム(アマチュア無線)」は時代そのものだったのだ。
だからこそ、ジャーナルにあるように電機街に は「キミたち”エレキっ子”は「エジ・プラ」をぶらぶらしようじゃないか。ナニカを、きっとつかんでくるぜ! 浜のアキバ「エジ・プラ」を”エジぶら”しよう」と呼びかけるほどの勢いと魅力があった。
しかし、時代は移り変わった。
戦後間もなく電機街が形成された秋葉原は、ラジオ会館に電気部品とカードやフィギュアの店が混在し、秋葉原ラジオストアーが2013(平成25)年11月末で閉館することが発表されたことに象徴されるように、今はすっかり姿を変え、そして「世界のアキバ」となった。
しかし、「浜のアキバ」に残ったこの3店舗は、現代の石川町に残ったからこそ需要と価値が高まったともいえるだろう。その証拠に、専門業者やマニア垂涎のスポットとして、足繁く通う人は絶えることがない。
懐かしい昔のオーディオで懐かしいあの曲を聴くことが、ここに来ればできるかもしれない。
エジソンプラザ
住所/横浜市中区松影町1-3-7
タック電子販売
電話/045-651-0201
相模電子
電話/045-662-4767
シンコー電機
電話/045-662-4791
※本記事は2013年10月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。
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