撮影:五月女菜穂
KAATキッズ・プログラム2023『さかさまの世界』が7月1日(土)からKAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>で上演される。
KAAT神奈川芸術劇場では、2011年の開館以来、現代の舞台芸術シーンを先導するアーティストとの新作創作や良質な海外作品の招聘など、大人も子どもも楽しめるキッズ・プログラムを上演してきた。この度同プログラムの一つとして上演されるのが、欧州を中心に活躍し今年1月からストラスブール・グランテスト国立演劇センター「TJP」のディレクター(総芸術監督)に就任したダンサー・振付家の伊藤郁女(いとう・かおり)による新作ダンス作品『さかさまの世界』だ。
「おさなごころを持つ4歳から150歳向けダンス作品」と銘打った本作は、子どもたちのさまざまな<ひみつ話>を素材として、伊藤が2021年10月にフランスで創作したダンス作品『LE MONDE À L’ENVERS』がベースにあるが、昨年12月に劇場近隣の幼保園や幼稚園でリサーチを行った子どもたちの<ひみつ>を新たに織り込んでいる。また、フランス版では3名のダンサーによる構成だったが、日本版では3名のダンサー(川合ロン、Aokid、岡本優)と1名の俳優(石川朝日)という構成に変更する。
開幕を前にした6月16日(金)、劇場近くにある横濱中華幼保園で本作の試演会が行われ、園児約40名の前で30分ほどのパフォーマンスを上演した。子どもたちは目の前で行われるパフォーマンスに泣いたり笑ったり興奮したり、「面白い!」「変なの!」と感想をそのまま口にしたりと、物語の世界に夢中になっていた。上演後には園児から感想を直接聞く時間が設けられ、そこで得られたことは今後の創作に活かすという。
伊藤は試演会後のインタビューで「幼保園はいわば“子どもの家”で、ダンサーにとっては劇場とはまた違ったプレッシャーがあったはず。努めて冷静に踊らないと、きめ細やかさのようなものがなくなってしまうので、(出演者にとって)いいトレーニングになったと思う」と振り返る。そして伊藤は「KAATは前衛的ですごく大切な劇場」とした上で「子どもの頃から質の高いものを見られる社会にしたい。劇場は、日常から逃れられる、みんなが無の状態でいられる場所。その良さをもっと知って欲しい」と語っていた。
公演は7月9日(日)まで(※3日(月)~7日(金)休演)。
取材・文:五月女菜穂







