子どもから大人まで幅広い世代を魅了するファンタジー小説として、熱狂的なファンを持つ『精霊の守り人』(上橋菜穂子作)。TVドラマや漫画にもなった本作がついに舞台化され、日生劇場開場60周年記念公演として上演される。主人公のバルサは、ひょんなことから新ヨゴ皇国の皇子チャグムの用心棒を務めることになる女用心棒。ダブルキャストでバルサを演じる明日海りおに意気込みを聞いた。
花組トップスターを務めた宝塚歌劇団を2019年に退団。その後出演したミュージカルでは華やかな設定と衣裳のミュージカルが続いたが、今回は泥にまみれて戦う役どころだ。
「宝塚って下級生は兵士や警官役ということが多いので、実は懐かしさも感じていて(笑)。久しぶりなので不安もありますが、殺陣の基礎は学んでいるので、その頃お世話になった先生に恥ずかしくないように。これから稽古を詰めていけば、動きにキレも出てくると信じて頑張ります」と、早くもやる気充分の明日海。
今回の演出を担当する一色隆司氏(ドラマ版『精霊の守り人』や大河ドラマ『麒麟がくる』などを演出)からは、直接オファーが届いたという。「自分で言うのは恥ずかしいのですが…。『バルサの繊細で深い部分を表現できる人にやっていただきたいので』というお手紙でした。その温かい言葉が本当に嬉しく、これはやらなければと思ったんです」と明日海は話す。
すでにデモテープも1曲聴いたそうで、「樹々や大地のざわめきが伝わってくるような、壮大で神秘的な曲。温かい感じと少し寂しい感じが、原作から伝わる“ピュアさ”とピッタリはまっていて、聴きながらどんどん世界観に入り込んでいます」と語る。
初舞台からちょうど20年。明日海は「今でも毎回、自信がないところから始まる」と笑うが、穏やかな佇まいとは裏腹に、舞台では圧倒的なエネルギーを放出して観客を引き込むのは誰もが知るところ。
「初日の幕が開いてスポットライトがフワーッと当たり、“演者や制作陣と作ってきた役/自分”が動き出す時間がすごく好きです。お客様に観ていただいて作品が育ちはじめ、身体や心に起こる反応のようなものが日々少しずつ変化していく。その感触があるから、もっといいものを目指したいと思うのかもしれません。稽古場で苦しんだ分だけ本番で身になっていく感覚がたまらないんです(笑)」と明かす。
そんな彼女が演じるバルサはどんな表情を見せてくれるのか。本番を楽しみに待ちたい。
取材・文:藤野さくら
ヘアメイク:山下景子(コール)
スタイリスト:大沼こずえ(eleven.)