ピューリッツァー賞受賞の戦場カメラマンをモチーフに描いたオリジナルストーリーの舞台『1993-The Bang Bang Club-』が7月21日(金)から俳優座劇場にて上演される。

舞台は1993年、スーダン南部のアヨド村の干ばつした砂漠の一角から始まる。乾燥し灰色がかかった平原にうつぶせに横たわる1人の少女。そこへ一羽のハゲワシが降り立つ。フォト・ジャーナリストのケビン・カーターはシャッターを切る――。94年にピューリッツァー賞を受賞したケビンとその仲間たちで結成されたバンバン・クラブを独自の視点で描き、ジャーナリズムの本質に迫るストーリーだ。

ケビン役を演じる馬場良馬は「この作品は30年前、1枚の写真が世界の人たちにどう届き、どう社会問題化したのかということを描いております。これは、SNSなどで表面上の一部分を切り取って評価する現代にも通じるものがあると思っています。30年前に実際に起きていたことを伝えつつ、同時に今に通じる何かをお客様にお届けできたら」と話す。

馬場は、W主演をするピーター・マクラウド役の安里勇哉についても触れ「彼は『ニューヨーク・タイムズ』編集者の役。彼がケビンを追いかけ、描いた物語として、舞台のお話は進んでいきます。安里は膨大なセリフ量に頭を抱えていますが、彼はなんだかんだちゃんとやるだろうし、僕も彼の描いてくれたケビンだから、一生懸命やりたいです」。

グレッグを演じる高崎翔太は、本作について「1枚の写真を見て、この現状を打破したいと伝えたい人もいれば、その写真を撮っている暇があるなら少女を助けろという人もいる。正義のあり方が人によって違うんですよね。この作品をご覧になったお客様がどう感じるのか、気になります」。また、ソニーを演じる宮崎卓真も「この作品には情熱や信念を持った方々が多く出てきます。僕たちの役者としての情熱や、信念をうまく乗せながら、しっかりといいものをお客様に届けられるように頑張りたいです」。

観客へのメッセージとして、馬場は「僕は劇場という空間で、お客様と一緒にその場の空気を作って、物語を紡いでいく感覚がすごく好き。コロナ禍を経て、ここからがまた僕たちも踏ん張りどきだなと思います」と気を引き締める。そして「これからも面白い演劇を作っていきます。ぜひその一歩目となる本作をご覧ください」と話した。

公演は7月30日(日)まで。

取材・文:五月女菜穂