
小沢道成のソロユニット「EPOCH MAN」の新作『我ら宇宙の塵』が、8月2日(水)、東京・新宿シアタートップスで幕を開ける。そこで脚本・演出・美術・出演の4役を担う小沢と、キャストの池谷のぶえに話を訊いた。
まず小沢に2年ぶりの新作誕生の経緯を訊ねると、ある意外な言葉が返ってきた。「“遺作”という意味で、遺る作品を作りたいと思ったんです。“死んだ人はどこに行くのか?”というテーマに向き合った結果、僕は今こう思っているよってことを、両親が生きている間に見せたかった。そしてこれを観た方が、僕が死んだ後に『小沢さんは今もしかしたらこうなっているのかもしれない』と捉えてくれる可能性がある。その遺したい、という気持ちが創作のきっかけのひとつです」
EPOCH MAN初参加の池谷は、前作『鶴かもしれない2022』の衝撃をこう振り返る。「私は中島みゆきさんのパフォーマンスが好きなんですが、小沢さんを見た時、『ここにいた!』と思ったんです。それくらい素敵で、だからお声がけいただいた時はすごく嬉しかったです。今回の作品はとても普遍的で、誰しも経験するし、誰しも迷うもの。小沢さんは“遺作”とおっしゃいましたが、きっとこれから何回も上演していく、そしてやる度に新しい答えが見えてくる作品じゃないかなと。そんな作品の初演に携われることがまた嬉しいです」
池谷が演じるのは、5年前に夫を亡くした宇佐美陽子。突如姿を消したひとり息子の星太郎(しょうたろう)を探しに、彼女は街へ飛び出し…。「脚本を書いている時も、宇佐美さんの心情を考えるだけでとても苦しかったです」と小沢は切り出し、「その時に大事にしたのが、彼女と出会う人たちが愉快であればいいなと。でもその人たちも何かしら抱えていて、それにより彼女の心情がどう変わっていくのか。そこは僕自身あまり決めず、冒険のように書き進めていきました」。また池谷は自身の役どころについて、「最初は自分から進んでいく人だと思っていましたが、今は出会っていく人だなと。だから自分から発信というよりは、受けていきたいと思っています」と語った。
星太郎少年はパペットで表現。「僕が演じることも考えましたが、今回見た目は子供であって欲しいと思って。でも子役さんに演じてもらうのもまた違う。命の宿っていないパペットというものが、この話にはぴったりだと思ったんです」と小沢。命のないパペットが辿る、命を巡る物語。その旅の行く末は、ぜひ劇場で。
取材・文:野上瑠美子