イヌとネコ、そして彼らと関わる人間たちの物語を綴る朗読劇『しっぽのなかまたち』。昨年12月の全労済ホール/スペースゼロ、今年5月の恵比寿・エコー劇場での好評を受けての第3弾が、11月19日に東京・天王洲 銀河劇場で開幕した。
上演はオムニバス形式で、今回は第1回から続く『小雪と小春と小太郎と』に新作3本を加えた4部構成。男性6人・女性2人のキャストは日替わりで、しかも公演日によっては違う役を演じることもある。舞台上には、パステルカラーで彩られたたくさんの円柱。BGMや効果音を担当するギタリストの森大造に続いて、大きな台本を手にしたキャストたちが登場。円柱に腰掛け、ときには大きく舞台上を動きながら朗読するスタイルを取る。
1本目の『八月の冒険』は、母(山内鈴蘭)と暮らす耳に障害がある少年(神永圭祐)と、老いた聴導犬(荒木宏文)、新しく飼われた犬(東山光明)が繰り広げる一夜の出来事が軸になる。犬役の荒木・東山は人間役と同じような普段着だが、手にする台本カバーの色や毛並みで、どんな犬かを表現している。観客にだけは〝しっぽのなかまたち〟の思いが分かるという趣向が、観る者の想像力に訴える朗読劇によく合っている。しんみりするシーンでは、早くも会場のあちこちからすすり泣きが聞こえていた。
続いて、観客同様なぜか犬や猫の気持ちが分かる獣医(加藤和樹)の苦悩を描く『シラトリ動物病院へようこそ』、落ちこぼれ学生犬(石田晴香、鎌苅健太、東山、平牧仁)が、老犬(加藤)からドラマ『ごくせん』や『3年B組金八先生』ばりの熱血指導を受ける『犬の卒業』。コミカルな中に、シリアスなテーマが織り込まれている。ここまでの3作には観客との交流コーナーがあり、キャストが客席に降りてきたり、観客をステージに上げてクイズを行ったりと賑やかだ。
最後の『小雪と~』は、ペットOKの住まいを必死に探す飼い主(神永)と、それを気遣う猫2匹の思いを丁寧にたどる。シンプルな設定だからこそ、心に滲みるストーリーだ。猫役は石田・鎌苅で、ヤンキー犬をノリノリで演じた『犬の卒業』から一転、それぞれのキャラクターをじっくりと表現していたのが印象に残った。初日のキャストはいずれも役とハマッていたが、役替わりによってストーリーがどう変化するのかも非常に興味深い。
公演は12月1日(日)まで。会場販売のリピーターチケットでは、ペットの写真提示による割引を実施中。
取材・文:山上裕子