“朝ドラ”のオーディションに初めて挑み、2366人の中から連続テレビ小説「半分、青い。」のヒロイン役を射止めた永野芽郁。11月にスタートした岐阜でのロケから約3カ月。まさかのオーディション合格時から現在の心境、役へのアプローチ法や撮影エピソードなどを語ってくれた。
本作は、恋愛ドラマの名手・北川悦吏子氏が脚本を手掛けるオリジナルドラマ。故郷の岐阜県と東京を舞台に、ちょっとうかつだけれど失敗を恐れないヒロイン楡野鈴愛(にれの・すずめ)が、高度成長期の終わりから現代までを七転び八起きで駆け抜け、やがて一大発明を成し遂げるまでを描く物語だ。
-オーディションに合格したときのお気持ちは?
オーディションではいつも通り力を抜いて自由にやっていたので、やる気が伝わったのかが心配で、周りには「落ちました。無理です」と言っていました。だから、決まったときは「まさか、どういうこと?」ってパニックでした。母にはヒロイン発表会見の10分前に連絡すると、泣きながら「おめでとう」と言ってくれたので、親孝行できたと思いました。
-合格の決め手は何だったと考えていますか。
初主演映画『ひるなかの流星』(17)でも“すずめ”という役名だったので、今回の役名を聞いたときは、「私が朝ドラのヒロインをやれるとしたらこの子しかないだろうな」というフワッとしたものがありました。鈴愛という名前とタイミングと運だと思います。
-鈴愛にはどのような印象を持たれましたか。
他の人にはない感性があって、その存在だけで魅力的だし、心に刺さるような言葉を自然に言えるところがすごいと思いました。その魅力を、演じることで減らさないようにしたいです。
-自分との共通点や相違点を教えてください。
ポジティブなところは同じです。ネガティブになるぐらいなら楽しくいたいので、普段からあまり深く考えず、適当にふらっとやっています。感覚や感情で動くところは、以前の自分に似ているけど、最近は大人になったのか、行動に移す前に一番いい方向に行くことを考えるようになったので違うかな。
-役作りでは特に何を心掛けていますか。
鈴愛は自由で天真らんまんだけど、言葉を軽く言ってしまうと、軽いだけのわがままな子になって、愛されるヒロインにならないので、せりふはできるだけ考えて、ちゃんと相手に届くように発しています。
-左耳の聴力を失っている役どころの難しさはありますか。
何か聞こえたときに、右から振り返らないといけないとか、行動にある程度の制限があるので戸惑うことはありました。ただ、慣れてくるとあまり耳のことを考えることがなくなって、それが鈴愛になることなのかなと思いました。撮影前には小鈴愛(子役時代を演じる矢崎由紗)と一緒に、耳が聞こえないようにして授業を受けたり、片耳が聞こえない方にお話を伺ったり、リハーサルでは耳栓をしたこともありました。
-音をよく拾うために「付け耳」を付けるそうですね。
最初は「コメディー過ぎるだろう!」と思ったけど、鈴愛がやるとなじみます。見ている方は違和感を覚えるかもしれないけど、徐々につけ耳姿がいとおしくなるんじゃないかな。
-永野さんは現在18歳ですが、10代から40代まで、幅広い年代を演じることについてはいかがですか。
見た目が大きく変わらない限り、全然大人に見えないので、どうやって変化を見せていくのかが課題ですが、いろんな人の力を借りて、何とかしてもらいます(笑)。楽しみにしているのは子どもです。出産は未体験だし、結婚できないタイプだから実体験はできないと思うけど、子どもは大好きだし、もし自分に子どもができたら、いっぱい愛情を注ぎたいので、一足先に新婚生活を味わわせてもらいます。
-方言には苦労していますか。
語尾やテンポが難しくて無理…と思っていたけど、鈴愛自身がリアルさを感じさせない人間なので、想像でせりふを言ってもいいかも…と考えたら楽になりました。もちろんせりふはそのままで、言い回しを変えたり、チャレンジしながらやっています。
-鈴愛と同じ日に生まれた幼なじみ・萩尾律役の佐藤健さんが「鈴愛と永野さんはシンクロ率100パーセント」と称賛していましたが、ご自身の感触は。
鈴愛は自分にしかできないと思えるぐらいなじんでいます。最初は「素でできる」と言ったものの、作り込みすぎたり、キャラクター像をつかみ切れず、監督から「こんなふうに」といちいち指示されたりしていたけど、今は自然にせりふが出てくるし、無駄な体力を使わずにできています。
-佐藤さんとは、映画『るろうに剣心』(12)でも共演されましたが、再共演の感想は。
健さんは頭の回転が速くて、一緒にいればいるほどすごいと思わせてくれる先輩で、そっと支えて、温かく見守ってくださっています。本番中とその前後で、あまり変わらない方なので、常に鈴愛と律の関係でいられるし、お互いの波長がどんどん合っていく気がします。
-朝ドラは恋愛パートにも注目が集まりますが、律とはどのような関係になるのでしょうか。
恋人でも、ソウルメイトでも、ただの幼なじみでもない、同じ日に生まれたからこその不思議な関係です。いい具合にバランスが取れている2人だからこそ見ていられるので、健さんとは「深く考えないでやろうね」と言っています。あまり意識し過ぎると、恋愛感情のようにも見えてしまうので…。
-母親役の松雪泰子さん、父親役の滝藤賢一さん、祖父役の中村雅俊さんなど、楡野家の皆さんとは絆は深まっていますか。
楡野家の雰囲気は最高で、みんな大好きです。よく「朝ドラは大変だけど、本当の家族みたいになれる」と聞くけど、「いやいや、そんなわけないでしょ」と思っていたんです。でも、少しずつ距離が縮まって、本当の家族のようになっています。
-岐阜でのロケはいかがでしたか。
緑が多くて、空気もきれいで、穏やかな気持ちになれたので、鈴愛がこういう性格になったのはここで育ったからだろうなと思いました。現地の方はとても優しくて、これまで、目上の方から「芽郁ちゃん」と呼ばれることがなかったので、名前を呼んでもらったり、「頑張って」と声を掛けてもらったり、幸せでした。
-今後は、東京での撮影がまだまだ続きますが、今の心境は。
あと7カ月ですよ。普通に考えたら、連続ドラマ2本と映画1本ができるぐらいだから、すごく早いです。本当にすぐ終わりますよ! 壁は何も感じていません。北川さんが台本を早めに仕上げてくださるので、苦労することなくやらせてもらっています。ただ、毎日のことだから大変だということも分かるので、8カ月後ぐらいには「死にたい…」と言っているかもしれません(笑)。
(取材・文/錦怜那)