撮影:石阪大輔

7月22日(土)よりサンシャイン劇場で開幕するNAPPOS PRODUCE『嵐になるまで待って』。作・演出を務める成井豊によって30年前に書かれ、繰り返し上演されてきた本作は、成井自ら「自分の命が続く限り上演していこうと思った」と語る、自他ともに認める代表作だ。今回は7年ぶり、6度目の上演。田野優花や土屋神葉、多田直人、粟根まことらキャストも多彩。7月上旬のある日、この作品の稽古場を覗いた。

開幕までまだ半月ほどあるが、ほぼ全員が台本を手放しており、どんどん稽古が進んでいく。音楽も流しての稽古は本番さながら。複数の場面が同時に進行していくシーンもあり、そのスピーディな展開を追っているうち、つい物語に惹き込まれてしまう。台本でセリフを確認しながら稽古を見ていると、ちょっとしたかけ声や返事、軽口など、台本には書かれていない言葉がふんだんに挟み込まれていることがわかる。それによって会話にグルーヴ感が生まれているようにも見える。

稽古を見ながらペンで台本に書き込みを続ける成井。きりのいいところで一旦止めると、ダメ出しを始める。一方的に指示するのではなく、「今のセリフ、2人はタクシーが前と後ろ、どちらにいると思ってた?」とセリフを発したとき役者の頭の中に描かれていた世界を確認して、統一していく姿が印象的だ。

セリフの言い方、ニュアンス、表情などについての指摘はそれほど多くない。そのあたりはこれまでの稽古でほとんど完成されているということかもしれない。代わりに成井が伝えるのは、セリフや出はけのタイミングと、キャスト同士の位置関係。「ここ、ちょっとセリフが早かった」「今のタイミングでここに来ると、急いで出てきたように見えちゃう」。この細やかな調整が、作品のテンポを生み出しているのだろう。

役者たちの対応も早い。「このシーンのタイミングがちょっと合っていない」という成井の発言にすかさず「僕が一度相手を呼んでみたらどうですか?」と提案し、成井を納得させるのは粟根。土屋も「ここでもっと距離を詰めたい」という成井の要望に「じゃあ肩を組みます!」と試して、その案が採用されたりも。

演出家と役者が一体となって全力で駆けているような稽古場。本番ではおそらくこの勢いが最高潮に達するのだろう。今回の『嵐になるまで待って』が生み出す勢いと熱を楽しみにしたい。

取材・文:釣木文恵