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『コンサート・フォー・ジョージ』(7月28日公開)

 「静かなるビートル」と呼ばれた元ビートルズのジョージ・ハリスンの音楽と人生をたたえて開催された、一夜限りのトリビュートコンサートの模様を描いた映画が、ジョージ生誕80周年の今年、日本で初めて劇場公開される。

 本作に収録されたコンサートは、ジョージの妻オリビアと息子のダニー、そして盟友のエリック・クラプトンによって企画され、ジョージの死去から1年後の2002年11月29日に、イギリスのロイヤルアルバートホールで開催された。海外では、追悼コンサート開催20周年を記念して、先に劇場公開されている。

 音楽監督を務めたクラプトンの呼び掛けで、元ビートルズのポール・マッカートニーとリンゴ・スター、トム・ペティ、エレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)のジェフ・リン、「ゲット・バック・セッション」(69)でビートルズと共演し、「5人目のビートルズ」と呼ばれたビリー・プレストン、ジョージのシタールの師匠ラビ・シャンカール、ジョージが大好きだったコメディーグループ、モンティ・パイソンのメンバー(トム・ハンクスも参加)らが集結し、ジョージの楽曲や彼が愛した音楽を披露した。

 また、プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカー(キーボード)、ジム・ケルトナー(ドラム)、クラウス・フォアマン(ベース)、トム・スコット(サックス)、ジム・ホーン(サックス)、アルバート・リー(ギター)、レイ・クーパー(パーカッション)らが、バックミュージシャンとして参加している。

 彼ら、ジョージゆかりのミュージシャンたちが、時にはアイコンタクトを取り合いながら、本当に楽しそうに、曲を尊重しながら歌い演奏する姿が心に残る。その中心には若い頃のジョージとそっくりな息子ダニーがいることもあって、まるでジョージが仲間たちと一緒にコンサートを行っているような錯覚に陥り、彼が作った幅広い楽曲を聴きながら、改めて彼が残したものの素晴らしさを実感させられる。そして友人の遺児を元気づける心優しきおじさんたちによる一流の歌と演奏…。こんなコンサートはまれだ。

セットリスト

オープニング 「サーブ・シャーム」

「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」(ジェフ・リン)

アルバム『リボルバー』(66)から。1991年にジョージがクラプトンと共に行った日本ツアーでもオープニングナンバーとして演奏された。

「恋をするなら」(エリック・クラプトン)

『ラバー・ソウル』(65)から。66年のビートルズ日本公演(武道館)でも演奏された。

「タックスマン」(トム・ペティ&ハートブレイカーズ)

『リボルバー』から。ビートルズのアルバムで、ジョージの曲がトップを飾ったのはこの曲のみ。

「ハンドル・ウィズ・ケア」(トム・ペティ&ハートブレイカーズ/ジェフ・リン&ダニー・ハリスン)

ジョージが参加した“覆面バンド”トラヴェリング・ウィルベリーズのヒット曲。

「想い出のフォトグラフ」(リンゴ・スター)

リンゴのソロアルバム『リンゴ』(73)から。ジョージとの共作だけに、「僕にあるのは写真だけ、もう君は帰ってこないんだね」のフレーズが胸に染みる。

「ハニー・ドンド」(リンゴ・スター)

『ビートルズ・フォー・セール』(64)から。オリジナルはカール・パーキンス。歌の途中で、リンゴが「ロック・オン・ジョージ・ウィズ・リンゴ・ワン・タイム」と語るところがある。

「シット・オン・マイ・フェイス~ランバージャック・ソング」(モンティ・パイソン)

森林警備隊の一員に扮(ふん)してトム・ハンクスが特別参加。よく捜さないと見つからない。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」(ジョー・ブラウン)

『アビイ・ロード』(69)から。歌うのはビートルズが前座を務めたこともあるジョー・ブラウン。

「ホース・トゥ・ザ・ウォーター」(ジュールス・ホランド&サム・ブラウン)

ジョージの最後のレコーディング曲。

「ビウェア・オブ・ダークネス」(エリック・クラプトン)

ジョージの最初のソロアルバム『オール・シングス・マスト・パス』(70)から。

「イズント・イット・ア・ピティ」(エリック・クラプトン&ビリー・プレストン) 

『オール・シングス・マスト・パス』から。今回は後半部で「ヘイ・ジュード」の後半のリフレイン部分が使われた。プレストンが圧巻の歌と演奏を披露する。

「フォー・ユー・ブルー」(ポール・マッカートニー)

『レット・イット・ビー』(70)から。カントリー・ブルース調の楽曲。曲の途中の「サム・オールド・ザ・トゥエルブ・バー・ブルース」というジョージのせりふをリンゴが語り、ポールが笑顔を返す姿がたまらない。

「サムシング」(ポール・マッカートニー&エリック・クラプトン)

『アビイ・ロード』から。ウクレレ演奏で始まり、徐々に盛り上げていく形は、ジョージへのトリビュートとして、ポールが自身のコンサートでも行っている。

「アルバン」(指揮:アヌーシュカ・シャンカール)

オリジナル曲。アヌーシュカは、ジョージのシタールの師匠ラビ・シャンカールの娘。

「ジ・インナー・ライト」(ジェフ・リン&アヌーシュカ・シャンカール)

ビートルズ時代のジョージが、インド音楽を取り入れた1曲。リンが大健闘を見せる。

「マイ・スウィート・ロード」(ビリー・プレストン)

『オール・シングス・マスト・パス』から。ジョージの代表曲の一つだが、プレストンのバージョンが先にレコード化された。プレストンのソウルフルな歌と演奏が素晴らしい。

「オール・シングス・マスト・パス」(ポール・マッカートニー)

最初のソロアルバムのタイトル曲。丁寧に歌うポールの姿が印象的。「全ては過ぎ去っていく」という歌詞が心に響く。

「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」(エリック・クラプトン&ポール・マッカートニー)

『ザ・ビートルズ』(通称;ホワイト・アルバム)(68)から。ビートルズ時代のジョージの代表曲の一つ。クラプトンのリードギターに、ポールがピアノとハーモニーを加え、リンゴがドラムを叩くというのは、レコーディング時と同じだ。

「夢で逢いましょう」(ジョー・ブラウン)

スタンダードナンバー。

 何ともいえない温かさと楽しさに満ちた“ジョージとその仲間たちによるコンサート“を、ぜひ映画館の大きなスクリーンと優れた音響で体感してほしい。

(田中雄二)